都立小山台vs青山学院
逞しさを見せつけた小山台、青山学院を圧倒して2回戦進出
試合前の小山台の選手たち
学校のグラウンドも狭く、しかも進学校ということもあって、活動時間も限られているという環境、それでも一昨年夏と、その前年と2年連続して東東京大会準優勝という実績を誇る小山台。2014年春には21世紀枠でセンバツ出場も果たしている。まさに、正真正銘の”文武両道”校として高く評価されている。
ただ、この夏の大会は城北の前に屈して悔しい思いも味わった。そしてこの秋、一次ブロック予選では2試合とも2ケタ得点で、打撃力を示しての出場である。
しかし、青山学院はもっと悔しい思いを味わった。というのも、コロナ禍の夏季大会は学校として出場に対しての許可が下りず、戦わずして負けた形となってしまった。しかも、その報が入ったのは組み合わせ抽選の前日だった。たまたま、前チームは3年生がいなかったのだが、その悔しさはたまらなかったであろう。
その無念さをこらえて、今の1、2年生がそのまま出場する秋季大会ということになった。ただ、練習試合の許可が下りたのも7月27日過ぎてからということになり、秋季大会までには4試合程度しかこなせなかったという。また、サラリーマンでもある茂久田裕一監督は、実質的には週末しか練習が見られないという状況だ。そんな中で、日々の練習はメニューを渡して選手たちが自主的にやりながら、OBの力も借りてという状況でチームを作ってきた。
試合は、小山台打線のスイングの鋭さ、打球の強さが光った。小山台は3回、一死から8番中道君が中前打すると木暮君はきっちり送る。そして、1番濱口君が左前へ鋭くはじき返して先制。さらに、送球間に三塁へ進んでいた濱口君を3番早野君も右前へ強い打球を放って帰す。
4回にも一死三塁から8番中道君が右中間へ三塁打。続く木暮君も中前適時打。そして1番の濱口君が中越三塁打してこの回3点目。一つひとつの打球が鋭い勢いで野手の間を抜けていくのが印象的だった。
5回コールドで試合としては快勝だった小山台の福嶋正信監督。「打線は2回準優勝した時のチームにも負けないくらいにはなったかな…。もしかしたらもっと打てるかもしれません。ただ、投手はまだまだですよ」とは言うものの、右サイドから木暮君の投球はかなり切れ味よく打者に食い込んでいた。そして、「帝京戦を前に少し経験させておきたい」と、一死から三塁手の佐藤克晟君もマウンドに送り、四球後に併殺で抑えていたが、この併殺プレーなども落ち着いて見事な球さばきだった。
こうした部分にも、小山台のチームとしての逞しさを感じさせた。
結果としては、打撃力で圧倒したという形になった小山台。リードオフマンで主将でもある濱口隼君も、「都大会の初戦なので多少は緊張したんですけれども、僕たちのチームは打撃力のチームなので最初から積極的にどんどん行こうというつもりで向っていきました。夏には、悔しい思いをしたので、しっかりと悔しさを返していきたい」と、思いは強くアグレッシブだった。
そんな小山台だが福嶋監督は、「スタンドの、声を出せない中の応援、拍手だけで何ができるかということでやってみたんですけれども、それもよかったでしょう」と、まさに小山台の全員野球の真骨頂を示せたということを喜んでいた。そして、「次が楽しみ」と、帝京戦へ向けて、改めて気持ちを引き締めていた。
敗れた青山学院の茂久田監督は、「小山台レベルの相手に対して、失策などで崩れてしまったらこうなりますね。勝つためにはどうしていったらいいのかということが、よく分かったと思います」とこの負けを糧としてまた、チームを立て直していくつもりである。
(記事=手束仁)