桜丘vs安城東
中盤まで凌いで我慢の桜丘が4強、唯一の公立校安城東の夢砕く
ベスト8進出が決まった段階で、愛知大会は再抽選となる。
そんなこともあって、「愛知大会は、実は準々決勝の組み合わせが決まった段階で、新たに別の大会が始まる意識だ」ということを言う人もいるくらいだ。西三河地区の連盟役員も務めている安城東の大見健郎監督は、「いつもは、大会終盤にここへ来るときは、連盟役員としての仕事のために来るのだけれども、今日は試合としてこられたことが嬉しい」と、改めて、ここまで残ってきてくれた選手たちへの感謝の気持ちを表していた。
188チームという全国最多数で始まった大会だが、二週間足らずで64校となり、そこから32→16→8と試合ごとに残りが少なくって行く。それがトーナメント大会の見る側としての面白さでもあるのだが、現場としてはまさにここから、また一つひとつ、負けられない今までよりももっと厳しい戦いがプレッシャーとともに続いていくということになるのだ。とは言え、大会参加者としては、ここを一つの目標にもしている。だから、厳しいけれども、やり甲斐のある戦いということも言えよう。
ベスト8の中で唯一の公立校となった安城東だったが、東三河の強豪私学の桜丘に臆することなく立ち向かった。先制したのは安城東だった。3回、安城東はエースとしてここまでの進撃を引っ張ってきた8番の河合君からだったが、都築君、稲垣君と3連打して無死満塁という絶好機を作る。桜丘の堀尾君としても、安易に入っていったわけではなかっただろうが、ちょっと止められずに連打された。そして2番中村君の一打は投ゴロで1~2~3という絶好の併殺かと思われたが、一塁への送球がそれて本封のみで一死満塁。3番大見君には死球で安城東が押し出しの先制点。さらに、二死満塁から5番奥田君が右前打して2者が帰り、この回3点。なおも一二塁だったが、二塁走者がけん制で刺された。それでも、3点は試合展開としては大きいかなと思われたが、愛産大三河もすぐにその裏反撃した。
先頭の9番藤野君が内野送球エラーで出塁すると、バントは失敗するも、2番杉浦貫太君の中前打で二、三塁。森君の犠飛と、4番堀尾君の中前打で2点を返した。桜丘としては、同点には届かなかったものの、すぐに1点差としたということで試合の流れとしてはほとんど五分という雰囲気になれた。
こうなると、次のアクションがどうなるのか、それが大きく試合展開に影響しそうだが、4、5回を3人ずつで抑えられていた安城東は6回、四球と死球で二死一、二塁とするが、ここで桜丘は定番ともいえるパターンの継投に入る。堀尾君が一塁に回り、二塁手の吉見君がマウンドへ。そして二塁手に新たに近藤君が入る。これがまんまとハマり三振で切り抜ける。
そしてその裏、4番堀尾君が右前打してバントで二進。二死となったところで7番吉見君が左越二塁打して同点。吉見君は、前の回にいい感じでリリーフができ、そのいい気持ちを持って打席に入れて、それが好打に繋がったようだ。続く伊藤君も右越二塁打で逆転。結局、このリードを吉見君がキープし続けて逃げ切った。
桜丘の杉澤哲監督は、「3回の点の取られ方がよくなかったので、ちょっと嫌な感じもしていた。特に、相手の投手は変則気味のフォームだし、焦ってハマると嫌だなと思ったのだけれども、裏にすぐに追いかけられたのはよかった」そして、6回に抑えて打っての吉見君に関しては、「今日の吉見はリリーフとしては100点。今年のチームは、これと言って抜けた選手がいて引っ張るというのではないけれども、藤代中心に上級生がよく声を出していってまとまりは例年以上かもしれない。学校としても夏のベスト4は初なので、これからは未知のゾーンに入っていくけれども、楽しみもある」と、ここまでの戦いを評価しつつ、先への希望も見ていた。
安城東としては34年ぶりのベスト8の場での戦いとなった。大見監督は、「同地区で西尾東や若い指導者たちが頑張っていて、結果を出しているので、先が見えてきていますけど、私もまだ負けていられないぞと刺激にもなっています。今年の夏は本当にいい夏として過ごすことが出来ています。あと1点が届きませんでしたが、選手たちもよくやったと思いますし、持てる力は十分に出せたと思います」と、この試合だけではなく、この大会そのものの戦い方に対しても、大いに納得していた様子だった。
そして、「これからはすぐ、大会役員として仕事します」と切り替えていた。高校野球は、こういう指導者たちの思いや活動の積み上げによっても成り立っているのだ。
(文=手束 仁)