都立王子総合vs順天
機動力が生きた都立王子総合が、追いすがる順天を後半突き放し快勝
9回を投げ切った王子総合・今野
<秋季東京都高校野球大会1次予選:都立王子総合9-4順天>◇3日◇1回戦◇府中工グラウンド
9月の最初の週末を迎えて、東京都の高校野球では秋季大会の1次予選が各校グラウンドを中心として始まった。府中工会場の開幕試合は、都立王子総合と順天の戦いとなった。都立王子総合は、夏は巣鴨、都立深川にはコールド勝ちしたが、4回戦では決勝に進んだ日体大荏原に完敗した。順天は3回戦で城西大城西に敗れている。
新チームの場合、特に初戦ではチーム力の目安として、夏を経験したメンバーがどれだけ多くいるのかということが1つの目安となる。そういう意味からすれば、バッテリーと内野手3人が残った都立王子総合は、比較的経験値の高い選手が多く、チームとしても組みやすかったということも言えるのかもしれない。市川幸一前監督(現コーチ)の都立文京時代の教え子でもある寺崎貴哉監督も、「夏休みの練習でも、20~30くらいの練習試合をこなしてきた」と言うように試合慣れしているという印象ではあった。
その都立王子総合が初回、死球と盗塁、内野ゴロで1死三塁として3番小林の一塁ゴロで先制。さらに4番大間の左翼ソロで2点を先取した。しかし、追いかける順天も2回、5番西村の安打からバントと内野ゴロで2死三塁。そこから1点を返し、なおもチャンスを続け、1番山口の死球で満塁となると、2番土田が右前へポトリと落として同点とした。
同点とされた都立王子総合は3回、先頭の1番田中が左翼線二塁打すると、暴投で三進し、3番小林の中前打で再び突き放す。さらに、4回にも2死一、二塁から2番國越が中前へ落してリードを広げた。
ところが。順天も粘る。5回は2死から3番藤原が中前打で出ると、1、2打席はふるわなかった庄司が、この打席では思い切りよくスイング。捉えた打球は左翼越えの2ランとなった。こうして主砲の一発で再び順天は同点とした。
同点直後のイニングをしっかり抑えていけるかどうかというところも順天としては大きなポイントとなっていたが、グラウンド整備を挟んでの6回。この攻防が注目されたが、都立王子総合は1死から8番原崎が左前打して、盗塁と四死球で満塁とすると、國越の遊ゴロ併殺崩れの間に三走がかえって、三度、都立王子総合がリードした。さらに、3番小林が右前へ落して、スタートのよかった二塁走者もかえってこの回3点となった。
結果的に、都立王子総合はこの試合で最も大きなリードとなった。そして、7回から2番手としてマウンドに登った久保寺に対しても、四球後、盗塁で二塁に進むと2死から8番原崎が左中間二塁打で追加点。さらに、送球がそれてベンチに入ってしまい原崎までホームインしてしまった。順天としては、ちょっと悔やまれる余分な失点という形になってしまった。
こうして、ここまでカーリングゲームのように、どちらかに点が入りもう一方が0というランニングスコアで試合が推移していった。8回、9回は順天の久保寺が大きな変化球を有効に使って何とか抑えて、コールドゲームを阻止した。
また、都立王子総合の左腕今野(いまの)は、最後まで球威が衰えることなく、しなやかな投球で投げ切った。スタミナも十分にあるぞ、というところも示した。
寺崎監督は、「前半は苦しい試合展開でした。相手投手の低めを見切って行けという指示をしていたのですが、手が出てしまっていました。元々、そんなに打てるチームではありませんから、何とか機動力を使ってということを考えていたのですが、相手投手も、ややモーションが大きかったので、ある程度は走れるかなということで思い切っていかせました。走者が自分の判断で行くというところもありました」と、足を駆使した攻撃も十分に効果的だった。
都立王子総合は6クラスで全校の3分の1から4分の1くらいしか男子生徒がいない、女子生徒の多い学校だ。そして、ダンス部やフェンシング部は全国でも上位で活躍している生徒もいるという。フェンシング部などはこの夏はインターハイで優勝した生徒がいたくらいだ。そんな女子の部活動が活発な中で、野球部も負けてはいないぞと、この秋は結果を残していきたいところでもある。
前半は下位打線の活躍などで食い下がった順天。齋藤成利監督は、「練習を積んできた成果で、まとまった試合はできたと思う。ことに、今まで公式試合に出ていなくて、初めて出場した選手たちが、しっかり頑張って安打も出て、『自分たちも試合でやれるんだ』という気持ちになれたことが大きかったと思う」と、敗れはしたものの、戦い方には満足を得ていたようでもあった。そして、「こうした公式戦を自信として、次を目指していきたい」と、追いついた次のイニングに失点してしまうとか、余分な失点をしてしまうなどの反省点も多かったものの、しっかり学習して、来春以降へ向かっていける努力目標はしっかりと見つけられたようだった。
(記事=手束 仁)