備えあれば憂いなしの救急箱
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
夏の地方大会もほぼ終わりました。全国大会への切符を獲得したチームの皆さん、おめでとうございます。甲子園でも自分たちのパフォーマンスが十二分に発揮できるよう、体調を整え、しっかり準備して臨んでくださいね。また地方大会で敗れた学校は新チームとして活動を開始していることと思います。また次の目標に向けて、先輩たちの分までしっかりがんばっていきましょう。さて今回はグランドなどで起こったケガに対する応急処置について、必要な備品がそろっているかどうかを救急箱の中身をみてチェックしてみましょう。
救急箱の中身を定期的にチェックしよう
スライディングなどで膝をすりむくことは頻繁に起こる。適切な応急処置を行おう
多くのチームではチーム専用の救急箱を準備していることと思いますが、練習時だけではなく遠征時にも持参できるよう中身を定期的にチェックして確認しておく必要があります。またそれぞれの備品が何のために使うものなのかについても、しっかりと理解しておくようにしましょう。まずは救急箱に備えておくべき備品について、購入しやすいものを中心にご紹介したいと思います。遠征に持参することを考えるといろんなものを詰め込むというよりは、必要最低限のものを準備するようにしましょう。
★・・・必ず準備しておきたいもの
☆・・・あれば便利なもの
《アイシング用》
★ビニール袋(アイシング以外にもいろんな用途があるので必ず入れておこう)
★バンテージ・包帯類
☆コールドスプレー(プレーを継続させる目的で使うがあくまでも一時的なもの。応急処置は必ず氷で行う)
☆氷のう(あれば。ビニール袋で十分対応可能)
練習や試合時に比較的よく起こるケガとしてデッドボールなどの打撲や捻挫などが挙げられます。このような時はすぐにRICE処置を行う必要があるので、氷を入れるためのビニール袋(もしくは氷のう)とそれを固定するためのバンテージ(弾性包帯)を準備しておきます。コールドスプレーは皮膚の表面を瞬間的に冷やすことで痛みの感覚を和らげますが、ケガの応急処置としては不向きです。
また湿布や保冷剤に関しては応急処置のシーンで使うことはあまりありません。湿布は炎症を抑えるために使いますが、患部を冷却する効果はそれほど見込めませんし、保冷剤についても急激に冷やすことによって低温やけどなどのリスクが高まりますので、応急処置として対応するときは氷を使うようにしましょう。
《創傷処置》(キズの手当て)
★滅菌ガーゼ(脱脂綿は綿毛が傷口についてしまうため、創傷処置には適さない)
★救急絆創膏(指用やある程度大きいものなどサイズの違うものをいくつか)
★消毒液(土や砂利などが傷口に入り込んでいる場合はオキシドール、それ以外はポピドンヨード(イソジン等)を使用)
☆湿潤療法用の保護材(薬局で購入できるものではキズパワーパッドなど)
☆メディカルグローブ(ない場合はビニール袋で両手を保護して作業する)
☆裁縫道具(ピンセットや針など)
☆綿棒
スライディングなどで膝をすりむいたり、切り傷などについてもよく見られるケガですが、軽傷である場合がほとんどであり、応急処置をしてプレーを続行することが多いと思います。このような場合は傷口を流水でよく洗い流した後、患部を保護する目的で応急処置を行います。この場合は脱脂綿やティッシュなどではなく滅菌ガーゼがあると便利です。また出血している場合も多いので、ビニール手袋を準備し、血液感染対策を行うようにしましょう(手袋がない場合はビニール袋で代用)。
備えあれば憂いなし!ケガへの対応は揃っていますか?
救急箱の中身は定期的に見直し、不足分は補充するようにしよう
《ケガへの対応》
★テーピング各種(ホワイト、伸縮テープ、非伸縮テープなど)
★はさみ
★三角巾(脱臼したときの固定に。1塁ベースなどへの帰塁時に肩を脱臼することがある)
★眼帯(目やその周辺部を保護する。意外と使う)
☆白色ワセリン(皮膚の保護・靴ずれ対策等)
☆副木・シーネ(骨折疑いのときに固定として使用。新聞紙や雑誌、傘、タオルなどでも代用可能)
《爪の保護やケア》
★爪切り
★やすり
★液体絆創膏(創傷処置でも使用。テープを利用して爪の補強に使うことがある)
爪切り、やすりは使用頻度の高いアイテムですので必ず備えておきたいところです。また投手などでは爪を割ってしまったときの応急処置として、テーピングで爪を補強し、その上から液体絆創膏を塗って固くすることで指先を気にせずに投げられることができます(参考コラム:爪が割れたとき)。
《その他》
★人工呼吸用キューマスク(万一に備えて準備しておきたい。ネットなどで購入可能)
★筆記用具
★体温計
★コンパクト鏡(目のケガ、コンタクトのトラブル等使用頻度は高い)
★近隣の病院リスト(あらかじめ作成しておき、救急箱に備え付けておく)
☆扇子(もしくはうちわ。熱中症対策として)
筆記用具は連絡先や緊急指示などをメモするために必ず準備しておきましょう。また近隣の病院リスト(整形外科・内科・眼科・歯科・総合病院など)を作っておくと誰でも対応することができます。さらに扇子かうちわを入れておくと、具合が悪くなったときや熱中症で倒れた選手をあおいで熱を下げるのに役立ちます。応急処置を必要とするものの多くは軽傷であることが多いのですが、いざケガが起こった時にあわてないよう、必要最低限の準備をしておきましょう。
【備えあれば憂いなしの救急箱】
●必要最低限のものを準備する。何もかも詰め込むといざという時に使いにくい
●アイシング時には湿布や保冷剤ではなく氷で冷やすようにする
●創傷処置として対応するときは滅菌ガーゼが便利
●代用できるものは代用品でも可能。臨機応変に対応しよう
●近所の病院リスト、応急処置用の物品リストを作っておくと便利
●使う用途と目的をしっかり理解しておくこと
(文=西村 典子)