崇徳vs盈進
崇徳・阪垣の独壇場!決勝2ランに10回完投
炎天下にも関わらず、崇徳の左横手投げの阪垣拓哉(3年)と盈進の本格派右腕・谷中文哉(2年)は投手戦を展開した。そんな熱戦に終止符を打ったのは、阪垣の貴重な一発だった。
2-2の同点での延長10回。阪垣は能島和輝主将の激励に「まかせとけ」と気合を入れ直しての打席だった。無死一塁から谷中の低めに入ったスライダーをすくい上げた。右中間方向に向かった打球を見つめながら必死になって走った。「打球は抜けるとは思いました。ただ、入るとは思いませんでした」。二塁を駆け回ったところでスピードを緩めた。阪垣自身、高校通算3本目となる本塁打は2試合連続となる決勝2ランとなった。4回以降、両校ともに得点の入らない膠(こう)着状態を打破する1本となった。
投げては10イニングを2失点に抑える好投を見せた。左サイドから投げる直球は手元で微妙に変化する。その特徴を生かして相手打線の的を絞らせなかった。「試合前から、こんな試合になるとは思っていました。粘って結果を出せてよかったです」。10イニングを投げ切ったことで投球にも自身をつけた。
高校進学後、腰を痛めた影響で半年ほど野球ができなかった時期があった。その影響もあり、最上学年になっても代打兼控えの外野手で起用されることが多かった。藤本誠監督からの一言で方向性が変わる。
「投手をやってみないか?」
今年3月から本格的に投球練習を開始。オーバースローからサイドに変更してから自信が芽生えた。春季大会で短いイニングを経験して、最終学年となった今夏、背番号「1」を身に付ける存在となった。「オーバーのときはまともにストライクが入らなかった。サイドから投げてコントロールがよくなった。投げると真っ直ぐがいろんな変化をするんです」。今では投球することが楽しくてたまらない。
カープ・野村謙二郎監督の長男である野村颯一郎は夏の大会2試合目にして初安打を放った。1年生ながら春季広島大会初戦からショートのレギュラーを奪った逸材。夏初戦は無安打に終わったが、2試合目の5打席目となる延長10回にライナー性の中前打を放った。「一安心しました」。周囲からのプレッシャーを受けながらも2盗塁を決めるなど、父譲りの野球センスを示した。
広陵など強豪校が敗れる波乱の広島大会。崇徳はベスト16に進んだ。能島主将は1年秋に経験した中国大会、2年夏の広島大会で広陵の壁を破れずに敗退した。「広陵がライバルだと思っていました。いなくなったのならば、夏は絶対に勝ちたい」。目の前の相手を1つずつクリアすれば念願の甲子園も見えてくる。広陵がいなくなった夏。能島の、崇徳ナインの夢舞台への思いがいっそう強くなっていた。
一方、2年生ながらMAX143キロの直球を誇る盈進・谷中は3回戦で散った。4回以降に調子を上げてきたものの、延長10回に3点を奪われて力尽きた。「この経験を次につなげていきたい」と前を向いた。山内明監督は「今後もまだまだ伸びる素材。最上学年になるのだから、チームを引っ張っていくぐらいの存在になってほしい」と期待を込めた。
(文=編集部)