中京大中京vs愛知啓成
先制の犠飛を放った山下(中京大中京)
ぶれない強さ。自らが掲げた理念を実践する中京大中京
中京大中京の夏の甲子園優勝監督、大藤敏行氏から2010年秋にチームを引き継いだ高橋源一郎監督33歳。伝統校で新たな歴史を作るべく入学時から指導してきた選手たちと3年目の戦いなる。
「2ストライクは全部フルスイング」「2ストライクになったらバットを短く持ち粘り強く」「ピッチャーは四球を出さない」「全力疾走」など選手たちと決めた10個の約束を試合前の円陣で確認し戦いに挑んだ。
中京大中京は1回、一死三塁一塁から4番・山下恵矢(2年)がライトへ高々と犠牲フライ放ち先制。2回には愛知啓成の守備が乱れノーヒットで2点目を取りペースを握った。
愛知啓成の先発・佐藤正尭(2年)は立ち上がりからボールが先行する苦しいピッチング。三回途中に佐藤が4つ目の四球を与えると、愛知啓成の岡田敬三監督は早めの継投を選択。
左腕の伊左次亮佑(2年)にスイッチし佐藤は三塁の守備に付いた。リリーフした伊左次は最初の打者に二塁打を浴び三塁二塁とピンチを広げてしまったが、後続の三番・四番打者を抑え追加点を与えなかった。
中京大中京の先発は、新チーム始動から頭角を現し背番号「1」を手に入れた粕谷太基(2年)。立ち上がりから死球やヒットで二塁にランナーを進めるが大事なところは変化球で三振を奪い、三回まで無失点に切り抜けた。だが4回に粕谷は突如崩れる。 一死満塁のピンチから愛知啓成の1番・加藤樹(2年)に押し出しの死球を与え1点を献上。
続く満塁の場面で愛知啓成はバットで挽回したい佐藤が打席に。「インコースを待っていて読み通りだった」という打球は見事レフト前への逆転タイムリーとなった。さらに三番・池田鏡介(2年)が2点タイムリー三塁打で続き、中京大中京の粕谷をマウンドから引きずり下ろした。
2ランHRを放った山本源(中京大中京)
逆転で3点をリードした愛知啓成だったがリリーフ伊左次は2イニング目で中京大中京打線に捕まった。
「初球ストライクが欲しくて簡単にストライクゾーンに投げてしまった」と悔やむ伊左次が投じた一球を中京大中京・中村健人(2年)が弾き返した。満塁から走者一掃の三塁打で5対5、ゲームは振り出しに。
「試合の流れを簡単に手放してしまった」と愛知啓成の岡田監督。押せ押せの中京大中京はチームの切り込み隊長、一番・山本源(2年)が大役を果たした。「インコースの直球をフルスイングした」という打球はレフトスタンドへ2ランホームラン。7対5と勝ち越した中京大中京が再び優位に立った。
5回に1点を返した愛知啓成は、再び佐藤をマウンドへ戻したが五回は3本のタイムリーを浴び6失点。球数が100球を超えた6回には中京大中京の2番・加藤に3ランホームランを浴びた。
「打たれていたが交代したくないという気持ちで投げた」という佐藤は、さらに連続ヒットから満塁のピンチを背負うと中京大中京の5番・楠拓也(2年)に10点差となるタイムリーを打たれ力尽きた。
継投で試合を組み立てられなかった愛知啓成は、まさかの6回コールド負け。一方の中京大中京は18安打17得点で猛打が爆発した。高橋監督は「自分たちで決めたことだけを、ぶれることなくしっかりやれた。毎試合チームはタフになってきている」と新チームの理念が確固たるものになってきたのを実感していた。
(文=加藤千勝)