日本学園vs立正大立正
緩急自在の日本学園・浅井、被安打4の完封で立正大立正を破る
完封した日本学園・浅井颯斗
1次予選の代表決定戦で、ともに接戦を勝ち抜いて都大会に出場した立正大立正と日本学園の一戦は、立正大立正の横手投げ・山本紘正と日本学園の左腕・浅井颯斗による息詰まる投手戦になった。
立正大立正の山本紘は、ピンチは招くものの、得点は許さない。「コーナーに投げることと、フォークボールにはまってくれました」と、山本紘は好投の理由を語る。
一方、日本学園の浅井は、スローカーブで打者のタイミングを外しながら、時折、力のあるストレートを投げる。「コロナによる休校期間に体ができて、球が強くなりました」と、高橋裕輔監督は語る。
実際、浅井の球速は、冬場は最速124キロだったが、今は130キロにアップしたという。130キロは高校野球では驚くべき速さではないが、スローカーブとの相乗効果で、より速く感じられる。コロナによる自粛期間、自主練習で鍛えた成果が出ている。
立正大立正にとって最大のチャンスは、この回先頭の8番・山本紘が二塁打で出塁した3回裏だった。しかし走者を進めることができず、得点できなかった。「悔いがあるとすれば、あの回の攻撃です」と内田和也監督は語る。その後は、塁に出ることもなかなかできなくなった。
それでも立正大立正の山本紘も踏ん張っているので、緊迫の投手戦が続いた。しかし試合の均衡は、思わぬ形で崩れた。
7回表日本学園は、一死後、9番・宮本虎太朗が二飛。しかし、立正大立正の二塁手が打球を見失い、内野安打となった。続く1番・吉澤仲容はエンドランで左前安打。立正大立正の左翼手から、三塁手への送球が乱れて、宮本が一気に生還して、日本学園が待望の1点を挙げた。吉澤はその間に三塁まで進み、2番・木下剛の中犠飛で日本学園はさらに1点を追加した。
この2点が重くのしかかり、2対0で日本学園が勝利した。
「あれだけミスが出ると……」と立正大立正の内田監督はミスによる失点を悔やんだ。けれども、選手個々の力はかなりある。投手陣はこの試合で好投した山本紘の他にも、9回に登板した球威のある西川拓磨がいる。この試合では結果を出せなかったが、主将で1番打者の松岡拓海は、攻守に野球センスの良さが光る。それでも、「自分たちの力不足が分かり、いい負けだったと思います」と、内田監督は言う。今後の成長が楽しみなチームであることは間違いない。
勝った日本学園の浅利は被安打4の完封勝利。「完封は練習試合を含めても初めてです」と浅利は言う。2回戦は25日に都営駒沢球場で東亜学園と対戦する。実は昨年の秋季都大会でも、2回戦に都営駒沢球場で東亜学園と対戦し、この時は日本学園が勝っている。「去年の試合はセカンド(吉澤)しか出ていませんから。楽しみにしています」と、高橋監督は語る。偶然が重なって実現した因縁の対決。楽しみな一戦だ。
(記事=大島裕史)