銚子商vs専大松戸
攻守にチームを引っ張る金井(銚子商業)
銚子商がスモールベースボールで復活、関東大会へ進出
千葉県の高校野球ファンでは、40代半ば以上の人であれば、やはり銚子商が登場となると、じっとしていられなくなるという人が多くいる。
春8回、夏12回の甲子園出場で通算39勝19敗。優勝1回、準優勝2回という実績もさることながら、それ以上に県内でも成東や習志野などと幾多の名勝負を演じてきて、1970~80年代に千葉県高校野球黄金時代を形成してきて、その核としての存在だったのである。だから、今でも多くのファンは「CHOSHO」のユニフォームに強い愛着と親しみ抱いているのではないだろうか。
その銚子商が、久しぶりにベスト4に進出。来春の甲子園を少し意識出来る位置に来たのである。胸をときめかせて球場に足を運んだオールドファンも多いに違いない。
それを迎え撃つのが、専大松戸だ。甲子園出場はまだないものの、茨城県では母校竜ヶ崎一を復活させ、どこにでもある普通の公立校藤代を強豪校に作り上げ、一時常総学院の監督も務めて、千葉へ移り専大松戸の指揮を執るようになったベテラン持丸修一監督が率いる。
「野球を知らねぇんだから、こっちのやりたいことが出来やしねぇわ」と、愚痴りながらもここまで進出してきているのはさすがである。
そんな新旧の対決というところにも興味が注がれた。
主導権を握ったのは、終始銚子商だった。8回までは銚子商は、ほぼ自分たちのペースで試合が出来たと言っていいのではないだろうか。
初回をあっさり3者凡退で抑えたその裏の攻撃で、銚子商は失策の走者をバントで送り、内野ゴロの間に三塁まで進める。ここで、4番金井君がセンター前へタイムリーを放って先制。3回には、2番三島君がレフト前ヒットで出ると、またも手堅くバントで進め、その後死四球で塁を埋めて満塁とすると、6番伊豆君の犠牲フライで2点目。
ピンチを逃れて勝利に笑顔の銚子商バッテリー
5回にも失策絡みで1死満塁としたところで、高上君がスクイズを決めて、3点目を奪った。かつての銚子商の“黒潮打線”と呼ばれた強打を知る人にとっては、いくらか物足りなく感じてしまうスモールベースボールかもしれないけれども、タイムリーヒット、犠牲飛球、スクイズとさまざまなバリエーションで得点を重ねて行く野球は、それなりに味のあるものかもしれない。
石井毅監督も、「これが今のウチの野球です。オーソドックスな形で点を取っていかないといけないんですよね。これで、安打が続けられたら、もっと得点が入るのでしょうけれどもね」と苦笑していた。それでも、少ない得点を身長170センチにも届いていない宇井野君は変化球の制球もよく、ストライクからボールになっていく球で巧みにゴロを打たせていく投球が冴えた。
それだけに、9回に内野のミス絡みで1点を失ったことに対しては、「ああいうことをやっていては、いけませんね」と、引き締めていた。
これで、15年ぶりの関東大会出場となった銚子商。
石井監督は、そのことにも感慨深げだったが、「試合が終わって、スタンドを見上げたら、ビックリしました。こんなにたくさんの人が応援してくれているんだなと思うと、有難かったです。多くの人が声もかけてくれました」と、嬉しそうだった。
最後まで本来の持ち味を出し切れなかった専大松戸だったが、持丸監督は、「技術では去年のチームよりも劣るけれども、精神的な部分でははるかに優っていますよ。だけど、正直なところ、もう一つ選手の層も薄いからね。今の選手を、どれだけ伸ばせていかれるかということになっちゃうからね、もうちょっと時間はかかると思うよ」と、選手たちの頑張りには期待しつつも、全体のチーム力の底上げは大きなテーマになりそうだ。それでも、今大会のベスト4進出は、高く評価していた。
(文=手束仁)