野球におけるスタミナアップとコンディショニング(2/2)
第54回 野球におけるスタミナアップとコンディショニング(2/2)2012年01月05日
特集『身体と心のスタミナアップ法』タイアップ企画
野球におけるスタミナアップの実践的トレーニング
皆さんこんにちは。ボディバランス整体院トレーニングルームの殖栗正登です。今回は前回に引き続き、特集『身体と心のスタミナアップ法』とタイアップし、野球におけるスタミナアップトレーニングについてお話します。さて、後編はいよいよ実践編。具体的にどんなポイントをチェックしていけばいいのか、どんなトレーニングをすればいいのか解説していきます。
バイオメカニズムから考える筋持久力
前回、筋持久力においても指標を示しましたが、プロ野球選手の握力は58kgから60kgですので、50回握力計を握った時の低下率を75%をキープするようにトレーニングをしましょう。大事なことは、計測した数値に基づいて科学的にトレーニングすることです。
筋持久力においても、投手と野手ではほとんど変わらない点を考えると、投手の投球におけるスタミナはいわゆる長距離走的なスタミナや同じ動作を何度も繰り返すトレーニングはほとんど意味がないと言えます。そこで、バイオメカニズムの観点で考えてみましょう。フォームに置いては投球数が増えると、
1:重心が高くなる
2:踏み込み足の屈曲角が小さくなる
3:最大水平外転角の低下
4:内旋筋力の低下
などが見られます。すると球が高めに浮いたり、球速が落ちたりする原因が明らかになります。このことから、ビデオなど撮影しながら投球練習を行い、先ほどの4つのポイントをチェックしていくことが大事になります。ただ単に球数を多く投げるのではなく、その中でコース、スピードを維持するようにトレーニングを行いましょう。この4つのポイントは試合でもチェックするといいでしょう。
スタミナトレーニングは指導者側のの自己満足になりがちです。なぜかというと、キツいトレーニングだからです。よく色々なチームにトレーナーとして行きますが、走り込み、投げ込み、1000本ノックといったものを見ます。すでに疲労している状態でいくらトレーニングをしても、筋を最大にしてハイパフォーマンスを出す野球というスポーツにおいては、あまり意味がないと思われます。
きちんと1回ずつ休み、意識を高めてトレーニングをして、テクニックの確認を行うこと。そして、反射レベルに落としこむために反復練習を行うこと。このトレーニングの基本的な考え方を選手、指導者が意識しなくては、練習のための練習になってしまいます。
練習とは、試合に勝つために行うものです。そのために、まずは正しいバイオメカニクスを理解して、それをまず覚えて反復練習を行い、あとは動作のスピードを上げていく、という流れを徹底して下さい。ノックであれば4秒以内に捕球してスローイングに持っていかなければ、試合で通用しません。ダブルブレーキも同様です。このように、試合でアウトをきちんと取れるようにトレーニング強度を上げていきましょう。
では次に、最大酸素摂取量が足りない選手のためのトレーニング方法を紹介します。
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実際のスタミナアップトレーニング
最大酸素摂取量とは、単位時間あたりにどれだけ多くの酸素を体内に摂取するかという能力です。これが多いと長距離走のパフォーマンスがあがります。
1:インターバルトレーニング
このトレーニングでは急走期(速く走る)と緩走期(ゆっくり走る)を繰り返すものです。急走期で心拍数が180拍/分、緩走期で120拍/分を下がらないようにします。もちろん個人差もありますので、ケースバイケースで対応しましょう。
【トレーニングメニュー例】
A:400m×10で緩走が100m + 200m×10で緩走が100m
B:1000m×6で緩走が400m
C:2000×5で緩走が400m
急走と緩走ともに、タイムの維持が大切です。
2:レペティショントレーニング
レペティショントレーニングとは、運動と休息を繰り返す方式のトレーニングです。最大酸素摂取量を出現するのは2~10分位で、距離にして800~3000mです。
【トレーニングメニュー例】
A:800m×5 休息5分間
B:3000m×5 休息10分間
こちらもタイムを維持することが大切です。
今回は野球におけるエアロビックパワーと筋持久力の数値、それにともなう結論とトレーニング方法を説明しました。スタミナとは、科学的に言えば最大酸素摂取量を上げることと筋力を維持し続けることです。そして何より、野球選手にとっては、野球に必要なスタミナを上げることを再度確認して欲しいです。あくまで球児の皆さんは野球選手であり、マラソン選手ではないのです。
一度、コンディショニングテストを行い、チェックをしてからトレーニングを処方して、身体能力があるのにパフォーマンスが崩れるのであれば、バイオメカニズムの観点からチェックする。トレーニングをトレーニングのために行うのではなく、あくまでゲームに勝つために行う。繰り返しになりますが、このことをチームの皆さんでよく考えてもらえればと思います。
私がコンディショニングコーチをしているチームは、実力が低いチームでも有酸素能力が高い所も多いです。しかし、瞬発力、筋力、パワーが低いことは、弱いチームほど顕著に見られます。野球のエネルギー機構の9割は無酸素系の10秒以内で終わるパフォーマンスです。野球の能力を高めるには、もしすでにスタミナ(有酸素、筋持久力)が十分にあれば、筋肥大、筋力パワートレーニングをメインに、回転やサイドへの重心移動を含む専門的なトレーニングを行う段階に進めて下さい。
今回は野球におけるスタミナアップのトレーニングについて2回に分けてお話ししました。まだまだ球児にとっては辛い時期が続きますが、残りのオフシーズンも頑張って行きましょう!!