試合レポート

明徳義塾vs岡豊

2013.07.25

明徳義塾・岸潤一郎が「快速球投手」に変貌した理由

 序盤の主導権を握ったのは岡豊だった。初回は中前打の壬生英暉(3年)遊撃手を犠打で送った一死二塁から3番・坂本鴻左翼手(3年)が左翼線に落とす先制適時打。続く2回表も一死一・三塁から8番・森岡育栄投手(3年)が緩い二塁ゴロ。明徳義塾先発・岸潤一郎(2年)の立ち上がりの悪さを見逃さず、自らを助ける追加点をあげた。

 が、4年連続の甲子園出場へ執念を燃やす明徳義塾はここから試合巧者ぶりを発揮。その裏、失策で出た先頭打者を2度の犠打で迎え入れ1点を返すと、4回には一死三塁から7番・大西主将中堅手(2年)が中前同点適時打。そして5回は3四球で得た一死満塁から5番・西岡貴成一塁手(3年)の左犠飛と6番・宋皞均(ソン・ホキュン)右翼手(3年)の中前打で一気に突き放す。

 その後、岡豊も7回表に5番・柴﨑隼人捕手(3年)の三塁打、6番・股川翔任中堅手(2年)の右前前で1点差に迫るも、最後は岸が後続を断ち3失点完投。3併殺を奪った堅守のリーダーである3番・逸﨑友誠三塁手(主将・3年)含め、昨年の甲子園ベスト4メンバーがそろって仕事を果たした明徳義塾が、18年連続のベスト4進出を果たした。

[page_break:この試合のエキサイティングプレイヤーはこの選手!]

エキサイティングプレイヤー

岸潤一郎明徳義塾2年・投手)

 「岸の今日の最速は143キロ。140キロも25球くらいありました」。

 ネット裏からチームに貢献する明徳義塾スカウティング部隊の球速報告は、彼が快速球派に変貌したことを意味していた。

 3回戦の高知工業戦では最速145キロを既にマーク。ボールの重さこそないが、糸を引くようなボールが次々と馬場雄大(3年)のミットに突き刺さる様は、130キロ台がやっとだった6月30日・済美(愛媛)との練習試合とは別人である。

 ただ、そこには確かな伏線がある。この済美との練習試合に足を運んでいた拓殖大・内田敏雄監督は試合が終わると、拓殖大出身・馬淵史郎監督の許しを得て、岸への即席指導を始めた。

 その内容はトレーニングの考え方、投球時の意識付けなど細部に渡るもの。亜細亜大監督時代は阿波野秀幸(近鉄→巨人→横浜、現:巨人2軍投手コーチ)や、小池秀朗(松下電器→近鉄→中日→近鉄→東北楽天)、高津臣吾(ヤクルト→MLBホワイトソックス・メッツ→東京ヤクルト→韓国ウリ・ヒーローズ→台湾・興農ブルズ→BCリーグ新潟)、川尻哲郎(日産自動車→阪神→大阪近鉄→東北楽天。現BCリーグ群馬コーチ)の同期3本柱、入来祐作(ホンダ→巨人→日本ハム→横浜、現横浜DeNA一軍用具担当)、木佐貫洋(巨人→オリックス→北海道日本ハム)など、プロ・アマ問わず数多くの一流投手を育成し、この春には就任8年目にして拓殖大を初の東都一部昇格に導いた名将の示唆がそこにはあった。

 「投げた後に右足を回してスムーズな回転を作った方がいい」

 そのうちの1つにこんなアドバイスが。そしてこの試合、岸の右脚を見てみると、序盤突っ張り気味だった足は中盤以降、綺麗に回っていることに気が付いた。

 もちろんこれだけが急激なスピードアップの要因ではないだろうが、内田監督のアドバイスがあった後、今があることも確か。もし、クレバーな彼がこの原理を理解しアレンジしているならば、快速球が剛速球に変化する日もそれほど遠くなさそうだ。

(文=寺下友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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