愛知黎明vs一宮興道
一宮興道・神庭君
一宮興道、溌剌プレーで昨夏の準優勝校愛知黎明に食い下がったが…
ライトからレフト方向へ強く吹きながら舞っているような風の影響もあって、いくらか集中がキレそうな場面もあったかも知れない。
昨夏の愛知大会は準優勝という結果を残した愛知黎明。図らずも、昨年は弥富から校名変更をしたところだった。弥富時代に一度は甲子園の出場実績があるが、県内では、愛知啓成や至学館などともに、新しい勢力として注目されつつある存在でもある。
そんな愛知黎明に対して、公立校の一宮興道は、臆することなく食い下がった。前半はリードを保ち、選手個々の力では上回る愛知黎明に対してリードを奪っていた。進学に重点を置いているという学校の方針もあり、普段は午後6時半には完全下校ということになっているため、日々の練習は6時15分くらいまでしかできないという制限がある。しかも、学校全体で比較的部活動も盛んだということもあって、右80メートル、左90メートルくらいの校庭をサッカー部や陸上部など、他の部活動と振り分けながら活動しているというのが現状だ。
そういった環境の中で、選手たちも自分たちのやれる範囲の中で精一杯にやっていこうという姿勢は十分に感じられた。加藤晴也監督も、
「選手たちは真面目で、一生懸命やってくれる、いい子たちなんですけれども、どうしてもあと一つ欲がないというか、そんなところもありますね」
という。このあたりも、地域一番校ではないけれども、それなりに評価されてきている学校としての特徴といえるものなのかもしれない。
愛知黎明2番手・木原君
そんな一宮興道だったが、愛知黎明の先発今井君に対して3回、2死二三塁から3番神庭(かんば)君の左前タイムリー打で2点を先取。さらに、5回にも2死一三塁からディレードスチールのような形で追加点を挙げた。こうして序盤をリードしていった。
追いかける愛知黎明は、丁寧な投球をする大野君に対して、やや打ち焦りというような感じもあったが、5回に4番栗林君の中前打で1点を返した。そして、6回に打者一巡で相手の2つの失策もあって一挙4点を挙げて逆転した。その後も、7、8回にいずれも失策も絡んで2点1点と追加していった。
それでも、一宮興道は8回に5番竹田君の2点二塁打などで3点を返して、愛知黎明を慌てさせたのは立派だった。
愛知黎明は、1年生で先発メンバーに名を連ねていた7番三塁の野田君や2番手として好投した左腕の木原君、途中で二塁守備に入り打席では安打も放った二塁の野瀬君など、いきなり起用された1年生も3人いたが、それぞれに期待には応えたのではないだろうか。こうした、下級生に刺激を受けながら、4番に座る栗林 良吏君ら、3年生は昨夏の実績も一つ自信にして、さらに上を目指して行きたいところであろう。
(文=手束 仁)