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戸郷翔征を輩出した聖心ウルスラ学園は攻めの姿勢で3度目の甲子園を目指す

2021.01.06

 毎年2月になると、プロ野球のキャンプ場所となってにぎわう宮崎県。今秋は宮崎商が頂点に立ち、九州大会でもベスト4まで勝ち進んだ。これによって選抜へ大きく前進する形となったが、春以降の巻き返しを図ろうと着々と準備をしているのが聖心ウルスラだ。

 2020年のNPBアワーズで新人特別賞に輝いた戸郷翔征を擁して2017年の夏の甲子園に出場するなど、これまでに2度の甲子園出場実績を持つ。秋はベスト16に終わったが、近年力を付ける聖心ウルスラの練習に迫った。

能力が高いからこそ、試合で戦えるように実戦を想定

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キャッチボールを行う聖心ウルスラナイン

 延岡市に学校を構える聖心ウルスラは車で10分ほど離れた場所に専用グラウンドを持つ。大自然に囲まれたグラウンドは両翼100メートル、センター120メートルという立派なグラウンドで選手たちは日々練習に打ち込む。

 この秋はベスト16で終わってしまったが、チームを率いる小田原斉監督は「今年のチームは走攻守のバランスがいいのが特徴的です」と強みを語る。また捕手を務める藤原光陽は、「個々の能力は高いと思います」とポテンシャルの高さを感じ取っていた。

 ただ今回の新型コロナウイルスの影響で現チームの選手たちは実戦経験に乏しい部分がある。「その問題は全国的にだと思います」と小田原監督は前置きをしつつも、実戦から多くの学びを得ようと試合形式での練習を増やして準備を進めてきた。その成果もあってか「秋は経験値が少ない中でもきっちりと戦えたと思います」と一定の効果を実感していた。

 だが、実戦練習を積んで経験を積むだけではなく明確な目標、目的も設定したうえで取り組んでいる。

 「実戦練習の中で、次の塁を狙うなど積極的な走塁をすることや、初球から積極的にスイングしていくことを意識して取り組むようにして行きました」(峯田椋馬

 この2点に関しては小田原監督も大事にしてきたポイントであり、「練習や試合からずっと伝えています」と粘り強く選手たちに伝え続けてきたメッセージである。ただそうした攻める姿勢というのはすぐにできることではない。

だからこそ、実戦練習から養うために、状況は2ストライクと追い込まれたケースや、得点圏の場面を設定する。そうしてあげることで、まずは気持ちの部分から準備できるように仕掛けを作っている。

[page_break:心を揺さぶるウルスラらしい野球で再び甲子園へ]

心を揺さぶるウルスラらしい野球で再び甲子園へ

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聖心ウルスラナイン

 心の準備が出来たら次は行動、つまり技術的なところが大事になる。では、どういった指導を小田原監督はしているのか。今回は走塁におけるポイントを教えていただいた。

「自分の目であったりランナーコーチャーの指示はもちろんですが、相手の野手の視線も見るように伝えています。そこからでも、自分の死角となっているところに打球が飛んでもどうなっているのか。ある程度想像をすることが出来ますので、そういったところからでも走塁を磨こうとしています」

 細かな部分からでも得られる情報から相手を攻める。そうして走力を磨いたが、「大会で左投手と対戦しましたが、リードから心理を揺らすことが出来ました」と大会の中でも成果が出たことを永迫蒼生駿は実感している。

 こうした相手の心理を揺らす、動かすというのは小田原監督が常に勝つために考えていることだ。
 「相手の心理を読む、言い換えれば心理を動かすことはよく話をします。打者とランナーが相手投手に色んな仕掛けをして、心理を揺らす。守備であればバッテリーを中心に相手打者を攻め立てて揺らすようにしています」

 これまで過去2度甲子園に出場したが、共通して相手のチームの心理を上手く揺らすことのできるチームだったと小田原監督は振り返る。そんなチームを作ることを目指すからこそ、積極性のあるプレーや攻めの姿勢を一貫しておこなうことが聖心ウルスラでは求められているのだ。

 その点で考えると、秋の敗因を「自分たちの心理の方が先に動いてしまいました」と小田原監督は語る。自分たちのやりたいことを、逆に相手にされてしまう形になったが、実戦練習できっちりと想定した状況で力を発揮するなど、想像以上に戦えたことは大きな収穫だった。

 だからこそ課題は明確になっている。
 「守備もまだ弱いですが、他に比べると振り込みが少ないので現在は毎日1000スイングすることをノルマにしています。春までに走攻守すべてが揃ったチームを作れればと思っています」(藤原光陽

 指揮する小田原監督は春先の成長に期待を寄せている。
「バランスがいいので、相手によって戦い方を変えることが出来れば面白いと思います。ただ甲子園に出場した時のように相手の心理を動かしたり、細かな部分が出来るようになると、もっと楽しみなチームになると思います」

 4年ぶりの甲子園へ。相手を常に攻め立て心を揺らがせる聖心ウルスラらしい野球で、宮崎の頂点を目指す。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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