Column

復帰登板へのカウントダウン

2014.04.03

 12月から、館山はハワイで調整を続けた。
 約2ヶ月。ボールは、ほとんど握らず、実践で投げられる身体をつくるためのトレーニングに明け暮れた。
「ランニングは毎日最低8キロ走りました。多いときは、ハーフマラソンの21キロ。これはハワイにいた期間は、1週間に必ず1回、計7回はハーフを走りましたね。速く走ることが目的ではないので、タイムは遅くて10キロで43分ぐらいでした」

実戦から遠のいているからこその工夫

 ウエイトトレーニングでは、より実践に近付けた身体を作り上げるために、トレーニングの目的によって、ハワイ市内の3箇所の施設を使い分けた。かけられる負荷の重さがトレーニング施設によって異なるためだ。
 それほどまで、細部にこだわり、調整を重ねてきた館山は、日本に戻るとすぐに沖縄へキャンプイン。

「今まではキャンプに入ると、打撃投手をやって標準に合わせていって、それで何事もなかったらオープン戦までスムーズに入っていきました。
 
ただ、今回は昨年4月11日に手術をしているので、2月11日がちょうど手術をして10ヶ月目。そこで、スムーズに入っていけるように、ハワイの自主トレでも波を作って練習をしてきました。試合で100に持っていくために、その時、その時の状態の中で、100に近い状態で調整をしてきたんです。でも、実際に振り返ると、試合に行くには物足りないところもあります。それでも、毎日の練習に対して100%、毎日投げるときも今の状態に対して100%に近いところで投げられるように、キャンプでは取り組んでいます」

 実戦から遠のいているからこそ、キャッチボールひとつ取っても、館山ならではの工夫がある。
「いつも、イメージをしてしまうんですよね。
 
何もないところでも、相手とキャッチボールする時は、しっかりとラインをイメージしてしまうんです。目印となる目標物があったら一番いいですけど、キャッチボールの距離だとバッターボックスから3、4メートル離れているイメージ。その距離感を保つイメージで僕はキャッチボールをやっています。
 
何もないところでキャッチボールするのが嫌なんですよね。必ず競技場でキャッチボールをするときも10メートルごとにコーンを置いておく。それに合わせて投げると自分の感覚が何メートルで投げているかが分かりますからね。イメージと体を連動させるということを大事にしているんです」

 実際にピッチングをしている時も、イメージは欠かさない。
「ピッチングでは、右打者を想定しながら外真っ直ぐ、内真っ直ぐというイメージで、次に左打者を想定しながら内真っ直ぐ、外真っ直ぐというイメージで。
 突然、野手を立たせて投げる時もあるんですけど、イメージしているものは現実的に存在していて、違和感もなく、想像なのか、妄想なのかは分からないですけど、いつもそうやって実践で投げるということに向けて準備をしています」

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見つけた課題

 そんな中で、見つけた課題がある。
「フォームのバランスは良くなってきているんですけど、それを9割ぐらいの状態にするために、体の壁だったり、踏み出す左足のつま先が今よりも2センチ深く入れることだったり。課題がまだいくつかありますね。わずか2センチずらすだけで、ホームベースで4センチぐらい変わってくるので、そういった改善でピッチングがよくなればいいなと。でも、それでアウトコースが良くなって、インコースが疎かになるようであれば、また新たな方向を探さなければならないですけど。

 というのも、手術をしたので、足の向きにこだわりすぎることで、肩と肘に負担をかけるのは良くないので、今は現状からピッチングをどう変えれば良くなるかというのも同時に考えています」

 過去に、ケガをする前のフォームと今のフォームを比べて、なぜそれが出来ないのかと悩むこともあった。しかし、今の館山は、手術後のベストな状態であるかどうかに目を向けるようになった。

 3月28日、シーズンは開幕。
 2014年は、館山にとって、どんな一年になるのだろうか。
 館山に今シーズンに懸ける思いを問いた。

「もちろん完治して、復帰することが一番の目標。でも、それってすごいことだと思うんですよ。村田兆治さんの時代は復帰するまで2、3年もかかっていたものが、1年で治る。 ドクターにも、ケガをした時に『全治1年で復帰できます』って言われていますし。だから、時間をかけてではなく、ケガをした1年後に、僕は一軍のマウンドに戻っていたいんです。それから――」

 館山は言葉を続ける。

「もちろん、プロの投手である以上、マウンドに立つからからには、勝つつもりでいます。そして常にキャリアハイを目指して頑張っていきたいと思います」

 館山の目に、焦りは一切ない。不安な思いも、ない。
 ただ、自分のやるべきことを信じるだけ。
 それが復活のマウンドへの一番の近道だと知っている。

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(文=安田未由

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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