試合レポート

金足農vs鹿児島実

2018.08.08

14奪三振完投!大会No.1の呼び声高い吉田が見せたハイレベルなピッチング

金足農vs鹿児島実 | 高校野球ドットコム

 大会ナンバーワン投手の呼び声高い金足農のエース、吉田輝星(3年)がどんなピッチングをするかに興味が集まったが、予想通り素晴らしいピッチングを展開した。ストレートの球速は1回表、143キロ程度が多く、速さだけに興味がある人はがっかりしたと思う。しかし、よかったのは投球フォーム。

 1回のピッチングに入る前、ステップする位置を丁寧に歩測する姿を見て、「ああ、このピッチャーはいいピッチングをするな」と思った。ちなみに、これまでステップする位置を歩測したピッチャーは生井惇己慶應義塾)くらいしか思い出せない。

 プレートの踏む位置は真ん中。鹿児島実の先発、吉村陸矩(3年)は三塁側を踏み、金足農のスタメンに並ぶ8人の右打者の外角球に横の角度をつけようという工夫が見られたが、吉田は吉村より球速が10キロを上回るので、このあたりの感覚はアバウトだ。また、下半身がステップしてから、時間差で上半身が下半身を追いかけること。つまり、「下半身→上半身」という体の使い方ができているかどうかだが、この体重移動も依然として発展途上。それでいながら吉田の投球フォームには見る者を魅了する美しさがある。

 投球フォームで最も重要なのは体(前肩)が開かないこと。これが吉田は完璧と言ってもいいくらいできている。「開かない」ことだけ一生懸命やると動きがぎくしゃくして投球フォーム全体が窮屈に見えるものだが、吉田の場合は動き全体がなめらかで、気になるのは繰り返しになるが、「下半身→上半身」の動きだけである。

 体が開かない効用は奪三振の内容にしっかり現れている。奪った14個の三振のうちストレートで取ったのは12個あり、さらにそのうち10個が空振りだった。現代野球においてストレートで三振を奪うというのは多数派ではない。ストレートを見せておいて、フォークボールやチェンジアップで三振を奪うパターンが多いはずだ。それが吉田の場合は14奪三振のうち12個がストレート。これは前肩が開かないことによって打者はボールの出所が見えにくかったのだろ。

 試合を振り返ると、3回裏に金足農は先頭の8番・菊地亮太(3年)がヒットで出塁、これを9番打者がバントで送って1死二塁とし、1番の菅原天空(3年)が1ボールからのファーストストライクを捉えて三塁打を放ち先制の1点を奪い、2番打者のスクイズが犠打と野選となりもう1点、さらに3、4番のヒットが続いて3点目が入った。吉田の投球が万全なだけにこの3点で試合は決したと言ってもいい。

 吉田の投球にも一度話を戻すと、目をみ見張ったのはギアチェンジしてスピードが上がった場面だ。5回表、1死二塁になり打者は1番の山下馨矢(3年)。1ボール2ストライクになり吉田が4球目に投じた球は内角への148キロをストレート(この日の最速)。山下のバットがぴくりとも動かず見逃がしの三振に倒れるのだが、コントロールの緻密さ、勝負どころで内角勝負する度胸のよさなど吉田のよさがすべて出た場面として記憶に残る。

(文=小関順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.25

昨夏甲子園16強・北海の卒業生進路紹介!元巨人外野手の息子らが中央大、147キロ右腕は社会人へ

2024.06.25

【南北海道】函館支部では第3シードの函館西と函館大有斗が初戦に挑む【2024夏の甲子園】

2024.06.25

【南北海道】室蘭支部では、第2シード苫小牧工が代表決定戦進出を狙う【2024夏の甲子園】

2024.06.25

【南北海道】小樽支部予選が26日に開幕!8年連続代表校の北照が登場【2024夏の甲子園】

2024.06.25

【滋賀】組み合わせ決まる!近江がいきなり彦根東と対戦<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.21

なぜ高校野球の新たなリーグ戦は拡大し続けているのか?『チームのために個人がいる』ではなく『個人の成長のためにチームがある』~野球指導者・阪長友仁のビジョン後編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.7】

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!

2024.06.23

大阪桐蔭が名門・日体大に1勝1分け! スター選手たちが快投・豪快弾・猛打賞! スーパー1年生もスタメン出場 【交流試合】

2024.06.21

【長野】22日に抽選会!上田西と東京都市大塩尻の「2強」に長野日大が続く、松商学園はノーシードからの「逆襲」へ<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.11

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在41地区が決定、長崎、高知、新潟、大分などでシードが決まる〈6月10日〉

2024.06.21

なぜ高校野球の新たなリーグ戦は拡大し続けているのか?『チームのために個人がいる』ではなく『個人の成長のためにチームがある』~野球指導者・阪長友仁のビジョン後編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.7】

2024.06.14

【福岡】九州国際大付は小倉商、東海大福岡は小倉南、春日は大川樟風、福岡大大濠は輝翔館と対戦【2024夏の甲子園】