星城vs名古屋
星城・山本
2年生好投手擁する星城が大苦戦
「初戦を勝ち上がれば星城×刈谷の好カードが2回戦で実現」。
組み合わせ抽選時から、そんな見方で紹介されてきた愛知大会Cブロック。だが、その星城が、2回戦に進むどころか、あわや1回戦で敗れ去るかの大苦戦を強いられた。
初回に1点を先制するも、チャンスでタイムリーを放つ名古屋打線はしぶとく、6回を終わって2-5と劣勢一方。それでも、星城サイドにはまだ余裕があるように見えた。だが、7回裏、8回裏とランナーは出るのに、走塁ミスやゲッツーで無得点。それでも、まだ星城の選手たちは悠長というか、切迫感がないように映る。
・・・大丈夫か!?あと1イニングで夏が終わるかもしれないんだよ?
と、筆者は心の中でヤキモキしながら見ていたところに、星城は9回表に痛恨の失点。
2-6と、ビハインドがさらに広がった。
星城負けるわ・・・。
だが、万事休すかと思われた9回裏になって、ようやく星城が必死になった。ベンチの控え部員全員が最前列に並んで声を出し、スタンドの応援団も心から祈るような雰囲気に変わったのだ。
そして、犠飛やタイムリーで4点を返し、最後の最後で同点に追いついた。
その必死さを、初回から出していてば、もっと楽な試合になっただろうに・・・。
なんて言っては、失礼かもしれないが、追い詰められないとやる気が起きない人(8月29日頃から夏休みの宿題を一気に片付け出す学生のような)を見るようなもどかしさを筆者は感じてしまったのも事実。選手らは「4点差でも負けるというムードはなかった」と言うけれども。
とはいえ、4点差を追いついた9回裏の星城ベンチの盛り上がりは、見ているこっちの気分まで高揚させてくれた。
凡打をしたら限りなく敗戦に近づく場面で、タイムリーを打った池田大、菊池勇志。この場面でよく打てるな~、と頭が下がる。筆者がその立場だったら、絶対に打てない。
***
筆者がこの試合を訪れたそもそもの目的は、星城の2年生投手2人を見るためだった。
先発した山本健太郎は、3イニングスを投げて降板。その間、相手の打順を2巡させるなど、苦労しているようにも見えたが、「ヒジのケガで最近まで投げられず、ほぼ“ぶっつけ本番”でこの試合に臨んだ。久々の割には結構投げられた方だと思います」と、チームの勝利もあって表情は暗くない。ゆっくりとしたフォームからクロスに踏み込んで、快活に腕を振ってキレのある快速球を投げていた。
一方、最速145キロの木原立遥は登板が無く、代打で出場してセンターの守備に入った。だが9回表にハーフライナーを後逸し(記録はヒット)、走者を生還させてしまう手痛いミスも。「あまりセンターの練習はしていなかったのですが・・・チームに申し訳ない気持ちでいっぱいだった」と反省するが、そういう苦い体験も糧にして、本職の投手業で大きく羽ばたいてほしい逸材だ。
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星城を追いつめた名古屋は「敢闘」という言葉がぴったりの、すばらしい試合を見せてくれた。
エース鈴木駿は、小柄な左腕。ゆるいボールを織り交ぜた投球で、星城打線に凡打の山を築かせた。中でも感心したシーンは、5-2とリードした7回裏の投球だ。先頭打者に対してカウントを0-3とするも、そこから2-3に立て直して三塁ファールフライ。続く打者もカウント0-2から2-2にしてセカンドフライ。星城打線も4巡目に差し掛かり、そろそろ投手のスタミナも切れて苦しくなってくる頃かな、という筆者の予想に反して、7回裏、8回裏を無得点で乗り切った。最終的に、9回裏に4点を失ってリードを守り切れなかったが、それまでの投球は心を打った。
打者では、ボールを柔らかく包み込むような巧みなミートで、1番彦坂崇仁が4打数4安打1四球の大活躍。投球にヒザで対応でき、体の返しが絶妙な美しいスイングをする6番塩原翔一も好打者だと感じた(それだけに、延長戦での2打席凡退は悔やまれるが)。
(文=尾関 雄一朗)
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名古屋 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | ||
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星城 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | 1X | 7 |
名古屋:鈴木駿、大常-大西
星城:山本、石田-池田