春日部共栄vs浦和実
春日部共栄・竹崎君
左右の好投手の投げ合い、春日部共栄がわずかなスキを突いて決勝進出
タイプの異なる左右の投手が投げ合って好投手戦を展開した。
結果的には、わずかなスキを突いて得点を重ねた春日部共栄が接戦を制して決勝進出を果たすとともに、関東大会進出を決めた。
浦和実は背番号20の1年生左腕早川君、春日部共栄はスラリとした今流行りの岩隈や涌井らに似たタイプの体つきの右腕投手。この二人の投げ合いは、お互いがそれぞれの持ち味を見せてくれた。
早川君は体も大きくないどころか、どちらかというと華奢な感じなのだが上体をしならせて投げ込む大きなタテ割れのカーブが効果的だった。
これと、小さくスッと曲がってくるカーブと2種類を持っており、これを春日部共栄打線もなかなか打ち切れなかった。
竹崎君はスライダーのコントロールがよく、力で牛耳るというのではなく、7~8分程度の力で投げていた感じだった。
結果的には8安打されたが、その内の6本が2死からのもの。カウントや状況を考えながら投げているという投球術の巧さも光った。また、こういうタイプの投手だけに、佐々木捕手のリードも大きかったのだろう。走者を許しながらも抑えていくというまさに技巧派だった。
試合は初回に動いて、春日部共栄が先頭の小泉君が左前打で出るとすかさず二盗。バントで三塁へ進めると、捕逸の間に先制ホームを踏んだ。小泉君はこの日は初回の1安打のみだったが、俊足巧打の好リードオフマンである。ノーサインで走れるだけの脚力と判断力は大きな武器だ。初回の得点はまさにその足で稼いだ先制点といってもいいものだった。
浦和実・早川君
ただ、それ以降は春日部共栄も早川君を攻めあぐんだ。スミ1が続く状況で竹崎君としても辛抱の投球となった。
一方、早川君としては何とか味方に追いついて欲しいところだったが、本塁が遠かった。
そんなお互いが我慢となった辛抱戦の展開で迎えた6回、早川君は先頭の藪内君にストレートの四球を与えてしまう。少し、体力的にも精神的にもスタミナが切れかかるところでもあった。
春日部共栄は、これを佐伯君がバントで進めると、四番鎌田君が右線を破る二塁打を放って待望の2点目が入った。
さらに2死後、相手失策もあって3点目も入った。結果的には、この1点が大きかった。
何とか反撃したい浦和実は8回、先頭の山口君が内野安打で出ると、内野ゴロで進み稲垣君の右前打で一三塁として、内野ゴロの間に三走が帰るが、結局この1点のみ。安打数では春日部共栄を上回りながらも、本塁が遠いという試合になってしまった。
今大会には入ってコールドゲームが続いていた春日部共栄だったが、初めて9回まで戦った試合で本多利治監督は、もう一つ会心の試合とはいえない表情だった。
「安打数では負けていたし、疲れたね。あのカーブはわかっていても打てないね。(勝ったら関東大会進出ということを)意識しないでやろうということは言っていたんだけれど、意識していましたよね。やっぱり、硬かったですよ」
と、まるで負け試合みたいなコメントを発していたが、それでも久しぶりの県大会決勝進出だ。
派手さはないものの、確実に試合を作れる投手と、わずかなスキを突いていかれる攻撃スタイルは、やはり春日部共栄らしいチームに仕上がりつつあるといっていいであろう。試合を重ねながら力をつけていきそうな雰囲気である。
次の戦いに期待を持たせてくれるチームともいえよう。
(文=手束 仁)