試合レポート

日大三vs明徳義塾

2011.03.25

日大三vs明徳義塾 | 高校野球ドットコム

マウンドに集まる明徳義塾ナイン

「意外なる展開」と「埋められなかったポテンシャル差」

「7回裏にライトを大西(輝幸・2年)から中平(亜斗務・3年)に早めに変えたのが『勝ち逃げに入った』と選手たちに思わせたのかもしれない。僕の大失敗ですね」。

取り囲んだ記者たちから甲子園初戦連勝記録がついに「20」で止まったことへの感想を求める質問が飛び交い、「いつかは止まるもの」と返答する一連のやり取りも一段落。馴染みの記者が周囲を取り囲んだとき、明徳義塾・馬淵史郎監督はポツリと自らの采配に対する反省の弁を述べた。

しかしながら、たとえその采配が名将の言うように「ミス」だったとしても、彼らが勝利を目指し全力で闘ったことに異論を挟む余地はないだろう。

まず試合直前、馬淵監督が「一定のリズムで投げさせないこと」を攻略ポイントとしていた日大三エース・吉永健太朗(3年)対策については、7四死球を与えた吉永の制球難や2失策の記録以上に拙さが目立った相手守備の拙さにも乗じ189球を投げさせ9安打5点を奪う粘り強さを完遂。

特に5回表にタイムリー2塁打をライト線に放った4番・北川倫太郎(3年)の目の覚めるような打球や、6回・3番・先田弦貴(3年)、5番・大西のタイムリーが飛び出すに至るまでの一連のプレッシャーの掛け方は「自分が目標としている監督だし、1回戦で負けないことはすごいこと」と馬淵監督について話した小倉全由監督率いる日大三ベンチをもうならせるものであった。


日大三vs明徳義塾 | 高校野球ドットコム

小倉全由監督(日大三)

一方、「1番から6番まではかなりいい」と馬淵監督が評した日大三打線と対峙した左腕・尾松義生(3年)、杉原賢吾(2年)のバッテリーは、「カットボールとカーブ中心で組み立てた」(尾松)要所を締める投球で、6回まで3失点。明徳義塾にとって試合は中盤までリードを奪う望外の展開となって終盤へと入っていった。

ところが、個々のポテンシャルでは大きく上回る日大三無言のプレッシャーは、徐々に明徳義塾へ見えない狂いを生じさせていく。まずベンチは冒頭に記した采配を振るい、8回・勝ち越し後なお無死、2・3塁のチャンスで打席に立った北川は「打ちにいこうとする気持ちが強すぎて」の三振で追加点を奪えず。その裏、腕の力がなくなったので、カーブを増やした」(杉原)バッテリーは、8番・吉永に四球を与えた直後の1死1・2塁のピンチに、9番・鈴木貴弘に高めのカーブを狙い打たれ、逆転2点タイムリー2塁打を許すことになったのだ。

かくして馬淵監督、飯野勝部長、佐藤洋コーチの3人が一致して「8回の攻撃と守りがポイントだった」と語ったように、あと一歩まで優勝候補を追い詰めながら、最後にチームの実力差が噴出する形で甲子園を去ることになった彼ら。全国屈指の試合巧者ですら、全国トップクラスのタレント集団に敵わなかった現実は、とりもなおさず、「相手の穴、弱点を突く試合運び」をストロングポイントにしてきた明徳義塾、そして四国高校野球の方向転換を余儀なくされる事態に発展するだろうし、四国の高校野球関係者は今こそ、「面白い勝負はしたが、それでも勝たないと意味がない」と言い切った名将の意見に耳を傾けるべきであろう。

(文=寺下友徳)

(撮影=中谷明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.07

【夏の逸材123人成績速報】超進学校に現れた二刀流の夏が終わる…。県岐阜商の149キロ右腕は4回1失点の力投

2024.07.07

【8日登場の逸材一覧】大分の県立校に現れた148キロ右腕、U-18代表候補の右腕が登場! 

2024.07.07

シードで明暗!中京、岐阜、岐阜第一、県立岐阜商は初戦突破、市立岐阜商は逆転負け【2024夏の甲子園】

2024.07.07

帝京長岡、日本文理は快勝発進、東京学館新潟は劇的サヨナラ勝ち、六日町は初戦敗退【2024夏の甲子園】

2024.07.07

宮崎学園が宮崎連覇へコールド発進、宮崎農は8回に4点差を逆転しての初戦突破【2024夏の甲子園】

2024.07.05

白山高元監督の“下剋上球児”再現はあるのか!? センバツ1勝の宇治山田商、2年生集団で東海大会準優勝の菰野など各ブロックの見所を紹介【2024夏・三重大会展望】

2024.07.07

【夏の逸材123人成績速報】超進学校に現れた二刀流の夏が終わる…。県岐阜商の149キロ右腕は4回1失点の力投

2024.07.07

【8日登場の逸材一覧】大分の県立校に現れた148キロ右腕、U-18代表候補の右腕が登場! 

2024.07.07

シードで明暗!中京、岐阜、岐阜第一、県立岐阜商は初戦突破、市立岐阜商は逆転負け【2024夏の甲子園】

2024.07.07

帝京長岡、日本文理は快勝発進、東京学館新潟は劇的サヨナラ勝ち、六日町は初戦敗退【2024夏の甲子園】

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.23

大阪桐蔭が名門・日体大に1勝1分け! スター選手たちが快投・豪快弾・猛打賞! スーパー1年生もスタメン出場 【交流試合】

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!