倉敷商vs早鞆
初回、中前適時打を放った清水(倉敷商)
間津対策実る!倉敷商22年ぶりの決勝進出
選手、監督として甲子園経験のある倉敷商・森光淳郎監督と、元プロ選手で夏の甲子園準優勝投手でもある早鞆・大越基監督のアラフォー対決。勝利へ導いたのは、経験と分析にまさった森光監督だった。チームをセンバツ出場へ大きく前進させた。
小雨の降り続くマツダスタジアム。初回に早鞆先発の間津(あいづ)裕瑳(2年)を攻め立てた。
先頭の藤井勝利(2年)が中前打で出鼻をくじき、四球とヒットで1死満塁とした。道下功太(2年)の左犠飛で先制すると、その後に3連打だ。清水繁(2年)の中前適時打後、片山祥希(2年)は右中間へ2点適時二塁打を放つ。初回に一気に5点。倉敷商応援団のボルテージがいきなり全快となった。
初回の5得点は効果てきめんだった。準々決勝の後、約1週間の間にMAX144キロを誇る間津対策を徹底した。それは「低めのスライダーを振らずに、真っ直ぐを狙っていくこと」(森光監督)だ。
ピンポイントのアドバイスに選手は対応できていた。ややシュート回転している相手エースの直球に狙いを定めた。2本の二塁打を放ち、2打点を挙げた片山は「コンパクトに速い球を打つ練習を繰り返しました」と振り返る。
主将でもある先頭打者の藤井は「相手投手の球は速いので、150キロを出す(打撃)マシンで練習していました。当てれば球は飛んでいくと思っていました」と話す。鋭くキレのあるスライダーを捨てる。徹底した直球マークは、初回の大量得点へとつながった。
西(倉敷商)
この試合で勝てば、センバツ出場へ大きく前進する。選手たちの緊張もマックスに達していたという。「今までしっかり練習をしてきた。あと1つ勝てば、次につなげられる。その気持ちがあって初回に打線が爆発できたと思います」と藤井主将。
中国大会ではこれまで厳しいコメントの多かった森光監督も「初回がよかった。積極的に打ちにいったのが結果に出ました」と選手たちを褒め称えた。
倉敷商の先発・西隆聖(2年)は気合十分だった。3失点で最後まで投げ切った。1イニング1失点までに食い止めて大量失点を防いだ。9回、森光監督の「2点取られてもいいから、3つのアウトを辛抱強く取れ」という言葉に発奮した。
球速は135キロ前後だが、シンカーの制球力でここまで勝ち上がった。「(大切にしているのは)気持ちです。持ち味を出せたと思います」と胸を張った。新チームになって帽子には「オレに任せろ」と書き込んでいる。
「(今年の)夏に準優勝した光星学院の投手(秋田教良)が書いていたのを見たんです。ピンチのときも意識して投げました」。自ら精神面を高めて、最後までリードを守り切った。
一方、早鞆は初回の5失点が響く形になった。多くのテレビカメラ、記者に囲まれた大越監督は「この大会まで勝つことで選手たちが自信をつけてきた。もう少し、やらないといけないこともある。もっとやれると思います」と話した。倉敷商に敗戦した経験をこの先に結びつけるつもりでいる。
(文=中牟田康)