試合レポート

報徳学園vs姫路工業

2012.05.01

報徳学園vs姫路工業 | 高校野球ドットコム

5回コールドを決め喜ぶ報徳ナイン

完勝!

「完勝でしたね」。
14安打10得点での5回コールドゲームに、試合後の報徳学園・永田裕治監督が発した口調は滑らか。それだけ〝会心〝と言えるゲーム展開だった。

立ち上がり。
先発した大力健人(3年)が、姫路工打線を三者凡退わずか9球で仕留めると、その裏に2番勝岡静也(2年)の内野安打をきっかけにチャンスを作って、5番片濱大輝(2年)の犠牲フライで先取点を挙げた。
3回裏は再び1番からの攻撃。この日トップに上がった前川祐輝(3年)がライト前ヒットを足で二塁打とすると、勝岡が送って、3番永岡駿治(3年)がタイムリーを放ち追加点を奪った。
4番吉田昌矢(3年)の3球目で永岡は盗塁を仕掛けるが、これは姫路工のキャッチャー・村山大樹(3年)の送球が上回って失敗に終わる。

 一瞬だけ流れが悪くなりかけたが、吉田は粘ってフルカウントから四球を選んだ。これで再び流れを取り戻すと、5番片濱と、6番佐渡友怜王(3年)がライト前へ運び3点目。
さらに7番岸田行倫(1年)が左中間を破る二塁打、8番大力がセンター前ヒットと続いて、姫路工先発の変則左腕・森本幸佑(3年)をノックアウトした。
代わって背番号1の高濱祐都(3年)がマウンドに上がるが、9番松谷竜暉(2年)がセンター前に運び、四者連続のタイムリーでこのイニング6得点。一気にコールドゲームにできる展開に持ち込んだ。

 締めくくりは5回。
1死から8番大力が相手の失策で出ると、9番松谷と2番勝岡にヒットが出て2死満塁。この日ここまで3安打の永岡を迎えた姫路工サイドはタイムを取って主将の魚澤博貴(3年)がマウンドに走った。取った策は前進守備。
しかし永岡はその前進守備をあざ笑うかのように左中間を破る一打。走者が全て生還し10点差。わずか1時間7分でゲームは終了した。


報徳学園vs姫路工業 | 高校野球ドットコム

大力健人投手(報徳学園)

 投げては大力が5回に浴びた1安打だけの準パーフェクトピッチング。
守りでも姫路工が唯一の走者を送りバントしてきた後、相手の心境を読んでいた、キャッチャーの松谷が冷静に二塁牽制でアウトにしてピンチを救った。
大力は今大会初登板。前回のエース田村伊知郎(3年)、1回戦乾陽平(2年)と投手陣が好投していただけに、「自分が足を引っ張る訳にはいかない」と、期するものがあったようだ。

永田監督は、縁の下で登板に向けて努力を続ける背番号10に、「(試合当日まで先発が分からないと)テンションが下がると思ったので」と、前日の練習で先発を告げていたという。
最高に気持ちが乗った右腕は、この冬場に格段に速くなった直球を生かして相手打線を翻弄。中学時代にバッテリーを組んでいたという、4番の村山に許した1安打だけと完璧なピッチングを見せた。これには指揮官も、「今日は大力を褒めてやってください」と最大級の賛辞を送った。

 さてこの日のゲームで大きなポイントになったのはやはり吉田の四球だろう。この攻撃が1点で終わるのと、2死からもう一度チャンスを作ってビッグイニングになるのとでは、両チームにとって大きなインパクトをもたらすからだ。この日はチームで唯一ヒットがなかった(四球2と犠打で打数も0)吉田だが、4番の仕事はしっかりと果たした。

さらにもう一つのポイントがある。5回の永岡が放ったコールドを決める一打だ。「4番、5番に繋ぐ意識で」と話した永岡はこうも付け加えた。
「5回で終わるのと、9回までやるのでは疲れ方も全然違います」。
場面は2死だっただけに、アウトになれば当然ゲームは続行しグランド整備の時間となる。試合時間も、もっと長くかかっていた。
決めるべきところで、しっかりと決めてゲームを終わらせ、休養の時間を増やす。体力勝負になる『夏』、それにこの日と同じ『準々決勝』と仮定すればわかりやすい。つまり疲労が溜まってくる大会終盤でこのようなゲームができれば、気持ちも体も充実し、しっかりと休養を取って次の『準決勝』に臨めるからだ。

5月3日から学校に泊まり込んで行う強化合宿を前に、永田監督はこの試合後の午後と、翌日(5月1日)の練習を休みにするとナインに告げた。
選手は今頃、快勝の充実感と、1日半の休息時間を味わっていることだろう。
そして体力勝負の夏をにらみ、指揮官が「選手たちには死んで(疲れて)もらう」と話した合宿が始まる。大型連休で母校に戻ってくる多くのOB達が、代わる代わるノックの嵐を浴びせる連休恒例の行事。

さらに、「今日勝てたのであと2回は必ず試合ができる。これは大きい」と話した永田監督。今大会では「1試合でも多く戦う」という明確な目的を持っている報徳学園。合宿と並行して公式戦をもっと戦えることで、さらにチームの成長に繋がると指揮官は捉えている。
そしてその先には近畿大会。永田監督は「地元ですし、出たいですね」と県外チームと戦う公式戦の場を熱望していた。

スターティングメンバー
姫路工
5堀田優麻、7永富俊輝、3田中翔太、2村山大樹、4山本雄亮、8利根川駿弥、6林哲生、9高濱忍月、1森本幸佑
報徳学園
7前川祐樹、8勝岡静也、4永岡駿治、9吉田昌矢、3片濱大輝、6佐渡友怜王、5岸田行倫、1大力健人、2松谷竜暉

(文=松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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