金光大阪vs関西大学北陽
![金光大阪vs関西大学北陽 | 高校野球ドットコム](/images/report/osaka/20120503002/photo01.jpg)
本野一哉投手(金光大阪)
経験できた修羅場!
3回裏、関大北陽は2死3塁から1番平松克仁(2年)がレフトオーバーの二塁打を放ち1点を先制。その得点だけで5回を折り返した。
流れとしては極めて静かなもので、金光大阪の阪下剛(2年)と関大北陽の吉川峻平(3年)による投手戦だった。それが後半、両チームにとって修羅場の連続になろうとは・・・
6回表、金光大阪は先頭の1番辻真彬(3年)がライトオーバーへ三塁打を放つと、1死後に横井一裕監督は3番櫻井健の1球目でスクイズを仕掛けた。しかしこれがキャッチャーの山田竜士(3年)によって外され、辻は三本間で挟まれタッチアウトになった。
その直後、櫻井の内野ゴロを平松がエラー。そして、4番渕上広志郎(3年)が左中間を破り櫻井が生還しゲームは振り出しに戻った。絶好のチャンスを逃し、流れを手放すかに思えた痛恨の失敗だったが、相手のミスからもう一度流れをものにした金光大阪。
関大北陽は7回裏、2死2塁から6番髙山弘輔(2年)のセンターオーバー三塁打、7番徳山大雅(3年)のタイムリーで2点を勝ち越した。
だが8回表、関大北陽にミスが相次いだのに乗じて金光大阪が3点を奪って逆転に成功。吉川は一度マウンドを降りて、レフトへ回った。この時点で完全に行ったり来たりの流れになっていた。
9回表に再びマウンドに上がった吉川が三者凡退に打ち取ると、その裏、今度は金光大阪の守りが乱れた。1死1、3塁になって7番徳山が犠牲フライを放って同点。ゲームは延長に突入した。
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吉川峻平主将(関西大学北陽)
延長になり立ち直ったのが吉川。一方で7回途中からリリーフしていた金光大阪の本野一哉(2年)は、制球に苦しんでいた。
11回裏、先頭の3番田渕佑起(2年)が四球で出塁するも、送りバント失敗と進塁打で2死2塁となった。打順はこの日当たっている6番、7番。
金光大阪の横井監督は、6番髙山を歩かせる指示をバッテリーに送った。1、2塁と場面が変わるが、7番徳山への1球目をキャッチャーの渕上が弾いてしまう。2、3塁と走者が進んで、「そこでも指示を出しました」と横井監督は再び敬遠の策を取った。
打席は8番吉川。ベンチの新納弘治監督はエースでキャプテンでもある男に大きな声で檄を飛ばした。
「ピッチャー心理を考えろよ!」。
しかし、本野が投じた1球目がやや中途半端な空振りになってしまった。2球目の内角は見逃しでストライクに。そして3球目、この日球審が最も取っていた右打者の外角へ本野が投じた。ストライクゾーン一杯に決まり、手が出なかった吉川。
「見逃し三振はなぁ・・・」と嘆いた新納監督。
本野は修羅場を凌ぎ、大きくガッツポーズをした。
12回表、1死から途中出場の9番徳永誠(3年)を歩かせた吉川。これがこの日初めての四球だった。続く1番辻がライト線へ運び、一塁から徳永が生還。ここで吉川は再びレフトに回り、左腕の原龍平(2年)がマウンドに立つが、代打武智光亮(3年)がセンターオーバーを放ちこのイニング2点目が入った。
その裏、1死から2本のヒットと四球で満塁とした関大北陽。だが2点という差が、マウンドの本野にとっての勇気となった。空振り三振とサードフライに打ち取り、2時間48分の激闘を金光大阪が制した。
終盤と延長以降、両チームに訪れた修羅場。完全な『気持ち』の勝負だったが、結果はともかく双方ともミスや四球、打撃など多くの課題が出た。
「まだお互いにチームが出来あがってないということでしょうね」と試合後に話した横井監督。だが勝てたことで、連戦(4日・履正社)の権利を得た。勝ち上がれば6日までの4日間で最大3試合の公式戦を戦うことができる。気候は違えど、日程的には夏を意識できるのが大型連休の特徴でもある。
関大北陽の新納監督は試合後のミーティングで、「ちょっと早く負けてしまった。もっと勝ちたかったな」と選手に諭した。やはりこういうゲームだからこそ勝った上で、チームとしての反省をしたいというのが本音だろう。
「こんな競った展開や延長戦は練習試合では中々できない」とも言った横井監督。
「一から出直し」とグランドを後にし、一足先に夏を目指す関大北陽。
お互いが貴重な公式戦で緊迫した展開(修羅場)を経験したこと。どう感じ、どう見つめ直して次に臨むことができるかが重要になる。
スターティングメンバー
【金光大阪】
4辻真彬、9隠岐泰成、8櫻井健、2渕上広志郎、1阪下剛、5三好雄大、6西川欣孝、3山川巽巳、7中山敏浩
【関大北陽】
6平松克仁、5高田悠生、5田渕佑起、7山上彰太、2山田竜士、3髙山弘輔、8徳山大雅、1吉川峻平、4巽太造
(文=松倉雄太)