鳴門vs松山商
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サヨナラのホームを踏む河野(鳴門)
繰り返された歓喜、繰り返された失敗
9回裏。打順がセンバツ時の5番から3番に上がった大和平(3年)の「ストレートを狙っていたが、カーブに体が反応した」打球がセンター上を超え、新チーム結成以来実に通算4度目となる鳴門のサヨナラ勝ちで決した大乱戦。ここにたどり着くまで要した2時間53分全体を振り返ると、そこに残るのは「徒労感」の三文字であった。
勝った鳴門はそれでも救われる部分がある。6回からリリーフし4イニングで7失点と大きく崩れた後藤田崇作(3年)も、「センバツ後に指の爪が割れて投げ込みもできず、調整不足で指にボールがかかっていなかった」とその要因は明確だし、3失策の内野守備もセンバツ同様折込済み。
むしろ3点差を追い付かれ、終盤2度勝ち越されても全く動ずることなく、計15安打を相手に浴びせてうっちゃった打線を見れば、「よく粘れたし、勝って勉強できることに感謝」と話した森脇稔監督のコメントも決して誇張表現ではない。センバツベスト8の経験は、いまだ残る疲労感以上に彼らの実力となりつつあると言ってよいだろう。
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7回表松山商・二死満塁から4番堀田が同点となる2点二塁打
一方、深刻なのは松山商業である。
良い点も確かにあった。「ボール球を振らず、粘り強く攻めた」(重澤和史監督)打線は合計12安打9得点。2安打3打点と4番の存在感を示した堀田晃(3年)や、思い切りよいスイングで9回表に一度は勝ち越しとなる2点二塁打を放った7番・島田翔(2年)、途中出場で9番に入り、7回の3得点につなげる安打と8回の1番・西森大騎(3年)の勝ち越し打につなげる犠打が光った井川紘輔(2年)など、個の部分にも成長が見られたことも収穫であろう。
しかし、その収穫も昨秋の愛媛県大会準々決勝、今春の愛媛県大会に続く3度目のサヨナラ負けで全て吹き飛んでしまった感は否めない。しかもその内容が悪い。「守り勝つ」野球を標榜しながらいずれも取れるアウトを逸した5失策もそうだし、5回途中からロングリリーフに立った堀田・岡本樹(3年)のバッテリーによる配球もそう。
特に1点を勝ち越した8回裏の1死2・3塁で「全然打てる気がしなかったので、打てる球だけを狙っていた」4番・杉本京太(3年)を迎えたシーン。
次打者・伊勢隼人(2年)の足を考えれば歩かせてもいい配球をすべきなのに、1ボール後っ高めにストライクを取りに行って同点タイムリーを喫した軽率さは、これまですすった2度のサヨナラ負けの苦さを完全に忘れてしまったと思わざるを得ない。
「この経験を活かして全体的にレベルアップしていきたい」と堀田自身は今後について述べたが、同じ種類の失敗を繰り返す経験は経験ではない。もう「次」は許されないし、次をした時点で高校野球生活は終わる。それだけは記しておきたい。
繰り返された歓喜。繰り返された失敗。「徒労感」を夏、徒労に終わらせないために、両者がこの試合をどのように捉えていくかが今後のポイントになってくるだろう。
(文=寺下友徳)