試合レポート

登美ヶ丘vs生駒

2012.05.06

登美ヶ丘vs生駒 | 高校野球ドットコム 

登美ケ丘・北投手は11奪三振の好投

公立の雄・登美ケ丘  新たなスタート

 公立校の性と言った方がいいのかもしれない。

登美ヶ丘VS生駒の対決はちょっとした因縁めいたカードだった。

長年、登美ヶ丘を率いていた北野定雄元監督が、県の人事異動で、生駒高校へ赴任。まだ指揮はとっていないとはいえ、その両校が相対したのだ。
40数校しかない奈良県だから、こうしたこともよくあるのだが、指揮官が変わった直後の大会で対戦するという奇妙な縁は、当該校にしか分からない、ちょっとした因縁でもあった。

北野氏の後を受けて、監督に就任した吉田卓郎監督は言う。
「やりにくさは多少あるけど、選手は一生懸命やるだけやから、モチベーションは高いと思う。前監督に見てもらえるわけやから、恩返しするつもりで全力でやれっていう話はしました」

もっとも、生駒ナインからからすれば、北野氏が指揮を取っているわけではないから、そうした因縁もどこ吹く風だ。登美ヶ丘側からの想いが強かったというのが現状だろう。

試合は、その想いの差が出たものだった。
1回表、2死から3番・北が右翼二塁打で出塁すると、4番・森本の左翼前安打で1点を先制。2回表には柳田の適時打などで2点を追加した。その後、膠着したものの、6回表に打線が爆発。四球に盗塁を絡め、5連続長短打で一気に5得点で試合を決めた。

投げては、先発した北が好投。7回を3安打1失点11奪三振。エース松尾に次ぐ二番手として、大きな結果を残した。
「ほとんど僕は動かなかった。選手たちが存分に溌剌と思い切りやってくれた。うちの子らは頑張るしかないわけやし、その姿も、北野君は見てくれているやろうし、いい試合をしてくれたと思う」。
吉田監督は快勝にほっと胸をなでおろしているようだった。


登美ヶ丘vs生駒 | 高校野球ドットコム 

吉田卓郎監督

 公立校にとって仕方がないとはいえ、不思議な対戦だった。
教え子を残してチームを去る淋しさあるだろうし、後を受ける指揮官も心中、複雑だったに違いない。

吉田監督には耳成や信貴ケ丘(現西和清陵)などで多くの経験を積んできた実績がある。4年ぶりの監督復帰だが、前監督の想いを汲んで、指導に当たるという。

「監督が替わるというのは、みんな不安やと思う。ただ、就任した時に子供たちにいったのは、監督が替わるとこちらとしては同じようにやっていても、『緩くなった』と言われる。だから、高いモチベーションをもってやろう。今まで以上に気持ちをあげていかなアカンよという話はしました。これからの課題は学校生活ですね。野球の練習はすごく一生懸命やっているし、できているチーム。今までの学校生活が悪かったわけではないけど、まだまだ、学校生活で頑張れる部分はあると思う。野球部員である前に登美ヶ丘高校の生徒。野球はしっかりできているんやから、そこを高めて人間力が高まれば、野球も自然に強くなってくる」。

前監督が築きあげた野球力に4年ぶりの現場復帰となった新監督が目指す人間力。
奈良県が誇る2人のベテラン指揮官の教えのもと、公立の雄・登美ヶ丘は新たな道を歩き始めた。

(文=氏原英明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.07

上田西が0封に抑えられて初戦敗退 23年はオリドラ1を擁して甲子園出場

2024.07.07

シード校の相手が決定、東海大相模、慶應義塾の相手は?8日の神奈川【2024夏の甲子園】

2024.07.06

23年三重王者・いなべ総合が初戦で敗れる!9回に逆転満塁弾を許す

2024.07.07

滋賀大会では日野がサヨナラ勝ち、伊吹はコールド勝ち【2024夏の甲子園】

2024.07.06

MAX153キロ、高校通算39本塁打、偏差値70! 東京の超進学校に現れた“規格外の男”森井翔太郎の「気になる進路」

2024.07.05

白山高元監督の“下剋上球児”再現はあるのか!? センバツ1勝の宇治山田商、2年生集団で東海大会準優勝の菰野など各ブロックの見所を紹介【2024夏・三重大会展望】

2024.07.05

春連覇した加藤学園は悲観達成を狙う! 静岡、日大三島、藤枝明誠、プロ注右腕・小船を擁する知徳らが行く手を阻む!?【2024夏・静岡大会展望】

2024.07.05

静岡大会ではノーシード勢が初戦、常葉大菊川、聖隷クリストファーが開幕6日に登場【2024夏の甲子園】

2024.07.05

大阪大会は京セラドーム大阪で6日に開幕、大阪桐蔭は14日、履正社は14日に初戦【2024夏の甲子園】

2024.07.05

三重大会が6日開幕、昨夏代表のいなべ総合が初日に登場【2024夏の甲子園】

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.23

大阪桐蔭が名門・日体大に1勝1分け! スター選手たちが快投・豪快弾・猛打賞! スーパー1年生もスタメン出場 【交流試合】

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!