藤沢西vs横浜創学館
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先発・小原(横浜創学館)
横浜創学館エース小原、粘りの完投
この日の[stadium]保土ヶ谷・神奈川新聞スタジアム[/stadium]は3試合。第1試合が延長13回の熱戦となったこともあり、第3試合の開始は16時24分。6回から点灯試合となり、この試合もまた延長戦へ。試合終了は19時10分。追いつ追われつの好試合で、最後まで残った観客からは大きな拍手が送られた。
ピッチャーをいつ代えるのだろう。
そう思いながら見ていたが、結局、最後まで投げ切った。
176球、被安打9、四死球9、奪三振10で完投勝利を挙げた横浜創学館の背番号1、左腕の小原拓也のことである。5回まで1失点も、6回から9回までに1、1、3、1と失点を重ね、明らかに疲れていた。ピッチャーライナーが足に当たっても、ベンチが動く気配はなかった。
「小原はこういう接戦で、粘れたことがなかったんです。今までは自分でゲームを壊していた。夏を考えたら、ここはひとりで投げ抜いてほしい。そういう思いがありました」。
横浜創学館・森田誠一監督の言葉である。春の大会の目標は、夏の神奈川大会でのシード権獲得。すでに第3シード以上を確定していたこともあり、この試合はあえて小原と心中した。小原に預けたといってもいい。
「代えるのは簡単なことです。でも、代えてしまったら…。ただ、もうちょっと小原がしっかり投げてくれないと。本当のエースだったら、逆転したところでそのまま逃げ切って終わりますよね」。
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7番矢野(横浜創学館)9回2アウトから同点タイムリー
例年、打線が強力な横浜創学館。県内では「打の創学館」として有名だ。
今年のチームは、新チーム時点で「近年でもっとも力がない」と森田監督は評していたが、今は「冬を越えて、バッティングは伸びてきた」と手ごたえを感じている。1キロや1.5キロのバットで硬球を打ったり、タイヤを叩いたりして、パワーをつけてきた。
この日は、藤沢西の技巧派左腕・沖田航季の変化球に手こずるも、6回裏に7番・矢野吏、8番・小原、9番・橋本拓樹の下位打者3人の長短打で逆転。
その後、2点のビハインドで迎えた9回裏には、2年生の4番・下川原巧輝が二塁打で出塁すると、2アウトと追い詰められたところから、八巻隆太郎、矢野がファーストストライクを積極的に強打し、連続タイムリー。土壇場で追いつき、延長にもちこんだ。
そして、10回裏、1死二塁から、2番・野口拓美がこちらもファーストストライクをとらえ、センターオーバーの二塁打。二塁ランナーの高橋がサヨナラのホームを踏んだ。
昨夏からメンバーがごっそりと入れ替わったため、例年よりは小粒感が否めないが、ここまで勝ち上がってくるのは地力があってこそ。ただ、「甲子園出場」となると、投手を含めた守備力の底上げが必要だ。
例年、横浜創学館の課題に挙がるのがそこ。そういう意味で、一本立ちを期待される小原の完投は、本人にとってもチームにとっても大きなものとなった。次戦以降のピッチングに期待がかかる。
敗れはしたが、藤沢西の中盤以降の粘り強い攻撃は見事。強豪私学をあと1アウトのところまで追いつめた。前任の川村靖監督(現・湘南高校)が県立の実力校に引き上げ、あとを継いだ戸塚義晃監督も選手の個性をうまく引き出しながら、好チームに育てている。
昨秋は地区予選で敗れたチームが、今春は3回戦で藤嶺藤沢を破るなど旋風を巻き起こした。ベスト16入りで、夏の第3シードが確定。夏のシード獲得は、学校として初めてのこととなる。
(文・写真=大利 実)