淡路vs東洋大姫路
林大地主将(東洋大姫路)
効いた立ち上がりの3得点!!
「立ち上がりの3点。結局あれが大きかったですね」。
東洋大姫路の藤田明彦監督は、思うように打線が繋がらなかった中で、唯一機能した1回の攻撃を勝因に挙げた。
相手、淡路のエース・北坂智久(3年)は、前日の関西学院戦で立ち上がりでリズムに乗って、わずか78球で完封した投手。
それだけに、「いつも言っていることですが」と1回の攻撃を最重点に置いていた。しかも先攻である。
その立ち上がり、1番の林大地(3年)が北坂の4球目を捕えてセンター前に運んだ。続く2番の横田徹寛(3年)はストレートの四球。関学戦とは違い、リズムに乗れなかった北坂のピッチングを逃さなかった東洋打線。3番の中島廉太(3年)がセンター前に運んであっさりと先取点を奪った。
さらに4番の片山幸春(2年)が送って1死2、3塁。打席は前日の2回戦(対龍野)の殊勲者で、この日5番抜擢された岩崎孟瑠(2年)。2ボール1ストライクからの4球目。やや高めに来たのを逃さずに振り切った。打球はレフト濵田道規(3年)の頭上を超え、二者が生還。岩崎も三塁まで陥れてこのイニング3点を奪った。
「よく打ってくれた」と1点で終わらず2点目、3点目を取れたことを讃えた藤田監督。
2回以降は北坂が立ち直り、中盤までチャンスをほとんど作れなかっただけに、「北坂君はあの回だけでしたね」と相手エースも気遣った。
待望の追加点はグランド整備後の6回。
4番片山がこの試合2つ目となる四球を選び、1死ながら5番岩崎が送りバント。そして6番の西川大世(3年)がレフト前へタイムリーを放った。
淡路のエース北坂はさすがに疲労感が否めなくなり、川端太一監督はここで背番号11の大谷悠吾(3年)への交代を決断した。
大谷は、右サイドの変則フォームの投手。これに東洋打線はタイミングが合わず、更なる追加点を奪うことができない。
リリーフした東洋・西田隼弥投手
嫌な流れになりそうなのを断ち切ったのが東洋の背番号『1』西田隼也(3年)。
先発した1年生右腕の新田卓が1点を失った4回途中からリリーフ。代わりっぱなは、ややコントロールに苦しんだが、2イニング目以降は持ち味の低めへの制球力を生かして淡路打線をほとんど完璧に抑えた。
昨秋まではベンチ外で、西姫路支部予選で初めてもらった背番号が『1』。
「もともと素質のある子だったようですが、11月くらいから練習試合で安定してきた。防御率も1点台くらい」と藤田監督は新しいエースに指名したのだ。
支部予選では先発していた西田を今はリリーフができる勉強をする為にあえて後ろに置いていると意図を話した指揮官。好投に見えた裏にも、「(先発の新田が残した)2ボールからマウンドに上がって四球を与えてしまった。まだまだですね」厳しい目をした藤田監督。
胸中は、『夏はこういう形でマウンドに上がることもあるよ』とエースに公式戦の場で教えたいのだ。
前日の2回戦で初先発し好投した田中謙伍(3年)や、左腕の横田徹寛(2年)。さらに秋のエースで今大会はベンチを外れた片岡迅也(3年)ら西田が手にした番号を狙う投手はたくさんいる。そして1年生の新田のような投手も出てきた。
大幅に変わった野手陣同様、まだ固まりきれていないレギュラーを目指してチーム内で熾烈な競争が繰り広げられている。
その中で、西田は「この背番号は誰にも渡したくない」と強い眼差しで誓った。
一方の敗れた淡路。立ち上がりの3失点は悔やまれるが、そこからはズルズルと崩れなかった。
北坂はやはり関学戦の完封が相当な自信になっているようで、悪いなりに抑える術を身につけられたのではないだろうか。二番手で上がった大谷も、アンダーハンド気味のフォームと緩い球を生かして、相手打線を翻弄した。
球を受ける女房役の山口祐司(3年)は、マウンドに駆け寄る際に見せる笑顔で投手陣の緊張をほぐしていた。
秋春とベスト8。夏の兵庫大会でのシード権を初めて獲得し、夏前半は地元(淡路島)に近い球場で試合ができるのも大きなメリットだ。ここから先に上がる厳しさを味わい、その悔しさをどう夏に生かせるか。
スターティングメンバー
【東洋大姫路】
7林大地、9横田徹寛、8中島廉太、2片山幸春、3岩崎孟瑠、5西川大世、4中川広希、1新田卓、6平野聖也
【淡路】
8高鍋康資、6人位厳、1北坂智久、3桑名剛生、2山口祐司、7濵田道規、4永西俊揮、5大黒周平、9森一馬
(文=松倉雄太)