彦根東vs比叡山
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優勝を決め笑顔を見せるナイン
打撃戦、制す!
両チーム合計28安打が乱れ飛ぶ乱打戦は、終盤に集中打で5点を奪うなどした比叡山が何とか逃げ切り、春夏連続甲子園出場した1999年以来、13年ぶり12度目の優勝を果たした。
「今日は私の采配どうこうではなく、選手たちがしっかり集中して戦ってくれたお陰です。相手はピッチャーもいいし、打線もよく振れている。接戦を覚悟していましたが、本当によくやってくれました」と選手達を讃えた比叡山の河畑成英監督。
1回表、先頭打者の1番・松本航一朗がレフトを超える大きな当たりを放った。すかさず二塁まで陥れたはずが、二塁上でまさかのタッチアウト。いきなりチャンスを潰す格好になった。
その、“嫌な流れ”が残っていたのか、その裏に失策で出塁を許した走者を長打で還され、あっさり先制点を許した。
彦根東の先発左腕・平尾拓也はこの日が3連投目だった。
ボールが先行するなど投球の随所に疲れを感じさせる部分はあったが、要所を何とか抑えるなど粘り強いピッチングを見せていた。
だが「100球を超えたあたりから、さすがに限界かと思った」と村中隆之監督が言うように、7回に球が高めに浮き始める。そこを、強打の比叡山打線は逃さなかった。
3番の中小路駿から中軸に4連打を浴び、一死満塁となったところで、マウンドをエースナンバーの西川尚志に譲ることとなった。
だが、西川は力みからか制球が定まらない。ここで連続四球を与えてしまい、押し出しで思わぬ2失点。
「2点ぐらいは取られる覚悟はしていたが、取られ方が悪かった」と村中監督。と指揮官が最も悔やむ形となった。合計5点が比叡山の7回のスコアボードに刻まれる。結果的にこのビッグイニングが彦根東サイドには重くのしかかった。
「今日は、ウチが先制して5回には追加点(3点)を取りましたが、このままで終わるとは思っていませんでした。後半に1点ずつ取られてもウチも粘れたら。中盤が終わって、子供たちには、あと3回は山を登らないといけないよ、と言っていました。ただ、ビッグイニングだけは作られたくなかったんですけれどね…」と村中監督は悔しさをにじませた。
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平尾拓也投手(彦根東)
今大会で連戦の中、村中監督が2年生左腕の平尾をあえて連投させたのは、3回戦で選抜大会出場の近江を延長戦で退けた力投や、準々決勝の高島戦で完封した勢いを買ったからだけではない。
「夏を見据えてどこまで連投できるのかを見たかったんです。正直、こんなところで無理をさせるのはどうかな、と思いましたが、公式戦でここまで投げることで新たな課題や収穫も見えてくる。でも平尾は期待以上のピッチングをしてくれたし、夏に向けての計算もたちました」。
打線も比叡山に負けない力強さを見せ、ビッグイニングを作られた7回以降も連打で2点を返すなど、しぶとさも兼ね備える。この粘り強さは夏に向けての大きな糧になるだろう。
一方、優勝した比叡山の河畑成英監督は、試合後、優勝の喜びだけでなくホッとした表情を浮かべていた。
同校は昨年9月に、部内の不祥事で秋の県大会を出場辞退。対外試合どころか全体練習を自粛する苦しい時期があった。
当時の監督、部長が入れ替わり、原点を見つめ直すべく、日々の清掃からゴミ拾いなどを重ねて自分を見つめ直したという。
「ただ、やらされるのではなく、自分たちで進んでこなす。ランニングで外に出た時に、自然とゴミに手を伸ばせるような“気づき”が出来るようになっていきました」(河畑監督)
選手たちの心の中は徐々に整えられていった。とにかく、『周囲に応援してもらえるチームになろう』というのが合言葉だった。
そんな、じっと“耐え抜いた”時間があったからこそ、試合が出来る喜びはひとしおだった。そうして、登りつめていった頂点の座。試合後、涙を流す選手がいたように、この優勝は比叡山ナインにとって、何倍の価値があるものとなった。
ほぼ満票でこのチームのキャプテンに選ばれた中村一朗捕手はこう話す。
「この春がこのチームにとって初めての公式戦だったので、試合では野球が出来る喜びをプレーで、というより野球に真剣に取り組む“姿勢”で表現したかったんです。この春は、その通りの試合が出来ました」。
13年ぶりの栄冠は、長くも暗いトンネルを抜けた瞬間でもあった。
スターティングメンバー
【比叡山】
5松本航一朗、6吉井愁杜、3中小路駿、2中村一朗、7岩見雅紀、4田中裕樹、9筒井恒太、 8本田達也、1林慎太郎
【彦根東】
8藤居秀、6山中俊亮、4島村卓投、3前川圭佑、7藤澤篤志、5三原和将、9大沢視人、2大﨑寛也 1平尾拓也、