試合レポート

明徳義塾vs高知

2012.05.23

明徳義塾vs高知 | 高校野球ドットコム

明徳義塾先発・岸潤一郎

「最終決戦」へ高まる機運。壮絶延長戦!

5月21日・月曜日の朝。高知県内では路上で東の空を眺める人が数多く目に付いた。もちろんお目当ては日本全土的に次は300年後とも噂される「金環日食」観測である。

ところが当日の高知県上空は厚い雲が覆い、空が見えた時間、地域はほんのわずか。神秘的な天文ショーの実感はその時間帯に薄暗くなった照度だけで終わった。いわゆる「期待外れ」だ。

しかし、当日午後に準決勝・高知中央戦での勝利で夏の第1シードを決めた明徳義塾と、第2シードを決めた高知による「平成24年度第65回高知県高等学校体育大会硬式野球の部」決勝戦は期待通り。いや、金環日食をも遥かに上回る熱いゲームとなった。

その中には1回・高知先発の坂本優太(2年)が押し出し四球を含む3点を与え、対する明徳義塾も4対3で迎えた7回表に3連続守備連携ミス(うち1つは内野安打)で一時同点に追いつかれるなど、技術不足に起因する空回りも多々あった。しかし、その一方で技の競演も十分堪能できるシーンもあった。

例えば明徳義塾では「5月時期の公式戦1年生4番」として先発した岸潤一郎の投げては4回まで高知打線を無安打に封じ、打っても3打数3安打という活躍。一方、高知ではその岸を6回表に一振りで捉えた高知4番・法兼駿(3年)の2ラン。そして3年間は雨天打ち切りが続き、実に4年ぶりとなる今大会での頂上決定戦以前に、「明徳」「KOCHI」のユニフォームを見ると自然に沸き立つお互いの闘志は、終盤にクライマックスを迎える。


明徳義塾vs高知 | 高校野球ドットコム

優勝した明徳義塾

5対4、明徳義塾リードで迎えた9回表・高知は1死から安打、死球、安打で満塁の好機を作ると、センバツでは背番号「7」を背負いながら悔しい途中出場に終わった北代滉(3年)が意地の同点打。さらに延長10回には1死1・2塁から岡﨑賢也(3年)の欠場などにより今大会3番に座っている芝翼(3年)が、緊急登板した4番手・小方聖稀(2年)のフルカウントからのストレートを強振。打球は数秒後、レフトポールを直撃し、グラウンドへ。「四国大会準決勝コールド負けから続く嫌なイメージがあった。だから、今大会では選手たちの頑張りをぶつけたかった」島田達二監督の意図を見事に汲んだつながる野球で、高知は圧巻の3点勝ち越しを果たしたのである。

一方、高校野球的にはセーフティーリードを付けられた明徳義塾。名将・馬淵史郎監督ですら「四国大会準決勝では法兼に(決勝アーチを)ライトポールへぶつけられて、今度はレフトポールと思った」と、第1シードを確保した余裕からあきらめの境地に入りつつあったが…。選手たちは全くあきらめていなかった。

延長戦でもマウンドに立った坂本に対し、まずは死球と安打でえ無死1・2塁とすると「思い切って引っ張れ」とベンチから送り出された小方が右中間を真っ二つに破る二点二塁打。さらに1死3塁から普段クールなキャプテンの1番・合田悟(3年)が一塁ベース上での咆哮付きの右前打。わずかこの回9球で同点にした明徳義塾は、さらに1死満塁とすると代打・高橋拓也(2年)が一塁手を強襲するゴロ。前にこぼれたボールを拾い上げ、ホームへ投じた芝の返球はわずかに逸れ、明徳義塾が奇跡的なサヨナラ勝ちを収めたのである。

その瞬間、春季四国大会優勝より明らかに喜びの表情を見せる明徳義塾。その瞬間、鳴門にサヨナラ負けした昨秋四国大会決勝戦より、明らかに悔しさを露わにする高知。夏は決勝戦まで対戦しない両者だが、最終決戦への機運はこの死闘によりさらに熟した感がある。

(文=寺下友徳)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.16

専大松戸が一挙6失点許してヒヤリ プロ注目の大型遊撃手の逆転本塁打で4回戦進出【2024夏の甲子園】

2024.07.16

元日ハム・飯山ジュニアの好投で修徳快勝! 双子の弟はセンバツ4強捕手、兄は元大学日本代表【24年夏・東東京大会】

2024.07.16

愛媛で宇和・渡部がノーヒットノーラン達成!帝京五を破る【2024夏の甲子園】

2024.07.16

茨城では土浦日大、水戸商、水城のシード3校が初戦突破!【2024夏の甲子園】

2024.07.16

富山中部が8回コールド勝ち、高岡南-魚津工戦は継続試合【2024年夏の甲子園・富山】

2024.07.14

甲子園通算19度出場・享栄が初戦敗退 1点差でまさかの敗戦【2024夏の甲子園】

2024.07.13

四国の夏を盛り上げる逸材20名! 全国注目の四国BIG3から「東大野球部か医者か」の秀才、名門・池田の小さな大エースまで【逸材選手リスト】

2024.07.15

ノーシード・二松学舎大附が2戦連続で延長戦を制す【2024夏の甲子園】

2024.07.13

モイセエフ擁する豊川、初の夏の甲子園へ戦力向上中! カギは超高校級スラッガーの前、投手陣は急成長 センバツの雪辱をはたすか!?【注目チーム紹介】

2024.07.15

プロ注目153キロ右腕が3回戦で姿消す 好リリーフ見せるもあと1点及ばず【2024夏の甲子園・兵庫】

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.23

大阪桐蔭が名門・日体大に1勝1分け! スター選手たちが快投・豪快弾・猛打賞! スーパー1年生もスタメン出場 【交流試合】

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」