高知工vs高知
2打数2安打の高知工業3番・植田大樹(高知工)
打棒で得た自信
スコアだけを見れば7回コールド。夏の第2シードを決めた高知の圧勝である。
だた、合計点の横に記されたヒット数は「高知工12:高知15」とほぼ互角の数字が刻まれていた。
高知戦だけではない。今大会では前日の準々決勝でも夏の第3シード・土佐から9安打を奪い9対6で撃破。
春季大会でも0対4で初戦敗退ながら明徳義塾・福丈幸(3年)に5安打を浴びせ、春以降の練習試合でも丸亀城西(香川)、済美(愛媛)、松山商(愛媛)といった甲子園出場校とも互角の勝負を演じるなど、彼らは2回戦で岡豊に3対13(7回コールド)に終わった昨秋から明らかな成長を遂げている。
では、なぜ高知工は闘えるチームに変貌したのか?その一端を横山真哉監督が明かしてくれた。
「ウチはグラウンドを使える日も週2日しかないんですが、その中で内外野の守備を練習してきました。そして春に明徳義塾に完封されたことで、打撃では短く持って強く振るイメージでやるようになった。ですから、今日も試合中盤まではイメージ通りだったんですが…」。
確かにそうだ。高知戦の12安打も全てが内野手の間、ないしは頭の上を抜く短打。そしてストレート主体に攻める和田恋(2年)に対し、3番・植田大樹(3年)、4番・横田聖(主将・3年)、5番・三浦凌平(3年)と続くクリーンアップも決して欲張らず、インパクトまでを短く、ミート後も短く振り切る。同点直後の5回裏に1番・堀尾茅(3年)にライトスタンドまで運ばれた軽率な一球。そして「あそこで、三塁送球で勝負しなかったことが悔しい」(横山監督)犠打エラーに始まる7回の一挙5失点さえなければ、試合の趨勢は正直、どちらに転ぶか判らなかった。
やるべきことを着実に行えば、目に見える成果は必ず出る。
「今大会ではいい勉強をさせてもらいました(土佐戦で完投した)小野川立晟(2年)が連投できるようになれば、夏も面白いとは思います」。指揮官の言葉は、全国無数の上昇を志す野球部に向けたエールでもある。
(文=寺下友徳)