伊集院vs徳之島
前元(徳之島)
ボール「見極め」好投手攻略
徳之島のエース前元良太は攻略の難しい投手だ。
184センチの長身でありながら、下手投げでストライクゾーンを広く使って勝負してくる。春の県大会では、強豪・樟南をねじ伏せた(参照:4月1日)。伊集院・内野公貴監督が攻略のポイントに挙げたのは「ボールの見極め」だった。
打者は一巡するまでは右打者はバッターボックスの後ろ、左打者はボックスの前に立って、「2ストライクまでは見逃し、球数を投げさせた」と話した内野監督。
3回までは1安打に封じられたが、二巡目からは「見極め」が効果を発揮する。
この時、指揮官は「左打者は自分の好きな位置、右打者はボックスの前」に立つことを指示した。
前元の投球は左打者なら比較的見やすいが、右打者は内側に食い込んでくるのと、外に逃げていくボールの幅が広いので、前に立つことで、どちらも曲がる前に叩けということである。
4回に挙げた3点は、ボールを見極めて四球を選んだ德澤昻洋を足掛かりに、意表を突くバスターエンドランでミスを誘ってチャンスを広げ、「ストライクをとりにきているのが分かったから、初球から狙った」という林卓充の二塁打とセーフティースクイズで奪ったものだった。
5打数3安打2打点、右打者の4番・新郷翔太は「打つには打ったけれど、ほとんどが詰まっていた」という。逆に言えば、前元の持ち味を、立ち位置の工夫とボールの見極めでそつなく攻略したということだ。
3点目をあげる徳之島高校
一方、9回に脅威の追い上げをみせた徳之島だったが、選手たちは悔しさをにじませた。「相手に負けたというより、自分たちで負けの流れを作った」と悔しい気持ちを代弁した田村正和監督。
4回の失点の場面が象徴的だった。先頭打者を四球で出し、バスターエンドランを仕掛けてきた相手に対し、サードが二塁併殺を狙ったが、ボールが逸れた。
カバーに入ったセカンドの当裕也主将は「身体で止めなければいけないのに、手だけで捕りにいってしまった」と悔やむ。うまくいけば二死、アウトが取れなくても一、二塁で止めておかなければいけないところが、無死一、三塁と傷口が広がり、3失点につながった。
「打たれて1イニング1失点ならば仕方がない。ビッグイニングを作らせてしまったのが痛かった」と田村監督。
春の県大会は強豪・樟南を倒し、6年ぶり3回目となるNHK旗の出場権を勝ち取った。大型連休中は沖縄に3日間遠征し、糸満、浦添工などと6試合をこなし、チーム力が向上した手ごたえをつかんでいた。
4回のシーンも、二塁でアウトを取れるような練習を積んできただけに「いざというときに焦ってしまってミスをしてしまう。そこをどう乗り越えていくか」を田村監督は課題に挙げる。
春の4回戦では、鹿児島情報を相手に4点のビハインドを、終盤2点差まで追い上げ、最終回に満塁の好機を作りながらあと一本が出ずに8強入りを逃した。
この日も2点差まで追い上げて満塁としながら、反撃がそこで止まった。当主将は「チャンスで1本打てる力をつけたい」と雪辱を誓った。
(文=政純一郎)