富山第一vs鯖江
優勝した富山第一ナイン
決勝を勝つ、そして次の戦いへ向けて
1回表に死球と相手のミスなどに乗じて3点を先制した富山第一。2回にも9番平山壮太(3年)の三塁打と1番平田真澄(2年)のタイムリーで1点を追加。
投げてはエース村上準(3年)が5回までしっかりとゲームを作り、6回からは宮本幸治(2年)にリレーして、終始優位な展開。結局7対1で鯖江を下し、春秋通じて初めての北信越頂点に立った。
「もう2番(準優勝)はいらない」。
初優勝を飾った富山第一の福井寛主将(3年)や、副主将でエースの村上は揃って口にした。
決勝戦。文字通りその大会の頂点を決める勝負の舞台である。甲子園出場が懸かる大会であろうと、そうでなかろうと、決勝で敗れることほど悔しいものはない。
富山第一は県大会2位での北信越大会出場。つまり、一度決勝で敗れる悔しさを味わっていた。だからこそ、夏へ向けて色んなテーマを持ちながらも、決勝で勝つことにこだわった。
黒田学監督は、この日の先発を宮本でいく方針を固めていたことを明かしたが、前日のバッテリーを含めた話し合いで村上が「ゲームを作りますから投げさせて下さい」と志願したという。
「背番号1を背負っている。自分が先にいって、2年生の宮本に良い形で(マウンドを)渡したかった」と村上。
前半の大量リードもあって、リズムよく5回まで2安打無失点に抑えた。言葉通り、しっかりとゲームの流れを作った背番号1。わずか61球と想像以上のピッチングに、「代える時に村上は少し不満そうでしたが」と指揮官は苦笑いしたが、予定通り本格派の宮本に継投した。
前日の日本文理戦同様、宮本の登板前に得点を重ね、7点というリードをもたらした打線の援護も忘れてはいけない。
一番舞台の重い“決勝”で負けたくない。そんな思いがつまった9イニング。7対1という形で勝利したことに、「勝負所で、力を発揮してくれた」と指揮官は、決勝を勝ちきった選手たちを讃えた。
一方で、敗れた鯖江は福井県大会を優勝しての出場。つまり、この日はこの春の公式戦で初めて負けた形になる。そこまでの2試合を投げ切ったエースの佐々木尊昂(3年)が疲労から登板しなかったとはいえ、守りでミスが出るなどで完敗だった。しかも“決勝戦”での負けである。選手たちは悔しいだろう。
ただしまだ夏がある。『次こそ決勝で負けない』と強く決意した眼を選手たちはしていた。
ミーティングで話す黒田学監督(富山第一)
さて富山第一の黒田監督は優勝したことを讃えながらも、「その結果だけに浮かれるのではなく、守備の精度や攻撃など見つかった課題をしっかりと反省して夏へ鍛えなおしたい」とコメントした。
1回に平田が死球で出塁。すかさず盗塁を決めて、相手守備陣のミスを誘い先取点に繋げた攻撃。2回には平田が盗塁を失敗したものの、次の2番土井野健太(3年)がすぐに出塁して盗塁を決めた。
「相手に印象付ける」(黒田監督)という意味でも見事な攻撃での4点で流れを掴んだ。
ところが、2回と同じく9番平山から始まった4回の攻撃では三者凡退。その姿を指揮官は許せなかった。
しかも、「チーム全体が違う方を向いたような(安易な)三者凡退だった」と一つ間違えば流れを相手に渡しかねないものだった。
例えば、同じ無得点でも3回は2死走者無しから8番金川広樹(3年)が出塁するなど、攻撃の形=意図は示している。
4回の三者凡退はそれとは正反対のものだった。
「もっと試合内容にこだわれた。夏も勝たないと意味がないので、ちゃんとやっていきたい」とナインの気持ちを代弁した福井主将。
指揮官も「(あと1カ月で)まだまだ追求できる」と話す。
高校野球のゴールはもっと先。その戦いに向け、球場を後にする選手の表情はすでに引き締まったものだった。
スターティングメンバー
【富山第一】
8平田真澄、5土井野健太、9福井寛、3黒田奨貴、6清水優佑、7黒竹直也、2金川広樹、1村上準、4平山壮太
【鯖江】
9山口博史、5八十島連平、8平沼潤哉、3池田周平、7小出恭平、1山田寛之、4田中慎也、2川﨑広太郎、6長尾拓磨
(文・写真=松倉雄太)