松原vs泉鳥取
試合への執念を示した一戦
泉鳥取の夏は終わった。
だが、時間を追うごとに暑さを増すグランドの上で、最後まで無心にボールを追いかけた。8回コールド負け。その瞬間を認識できていなかった選手もいる。
「ベースを離れるな!」と声をかけ、9回表の攻撃を信じて疑っていなかった。とことん真摯に野球と向き合ってきた証明に他ならない。負けてなお、泉鳥取の選手たちは勇敢だった。
4回まで、試合は五分の展開。1回表と裏にお互いが1点ずつを奪い合う。泉鳥取の先発・1年生の鬼塚海斗は苦しい投球を続けた。四死球が多く、自らピンチを招くことも多かった。ただ、バックがエースを盛り立てる。それは松原の先発・富田全弘も同じだ。
1回には3連続四死球からスクイズで失点。2回にも四球を与えてしまうが、後続の放ったヒット性の打球はセカンドの堀野晃平がジャンピングキャッチ。それぞれの守備機会にしっかりとしたプレーで対応する。良く鍛えられた堅い守備で引き締まった試合を演じていた。
だが、5回裏。試合が一気に動いた。制球に苦しむ鬼塚に松原打線が襲い掛かる。四球で溜めたランナーを7番中越一将が走者一掃のタイムリー。続く8番富田もセンター前にクリーンヒットを放ち、一挙に4得点をたたき出す。松原は4回からショートの藤田昌輝がマウンドに上がり、3回を1安打に抑える安定したピッチングを披露。7回からは再び富田がマウンドに戻り、初回の1失点のみに抑える。そして、6点差を広げた松原の8回裏の攻撃。四球と死球でランナーを溜めると、ダブルスチールを敢行。そして、4番中家亮輔がコールドゲームを成立させる犠牲フライをセンターに打ち返した。
敗れはしたが鬼塚は130球の熱投。披露した粘りには称賛だけが値する。エースを最後まで盛り立て、試合への執着心をグランドで示した泉鳥取の選手たち。負けてなお、多くのことを勝ち取ったことを感じさせる全力プレーだった。
勝った松原、敗れた泉鳥取。両チームともベンチ入りの登録選手は10人ずつ。でも、人数は少なくとも、お互い最後まで執念を示した見事な戦いぶりだった。
(文=小野慶太)