奈良情報商vs高円
選手たちが独自で練習に向き合い、臨んだ夏!
高円が見違えた野球を見せた。
「お前たちの力を見せてやれ、と送り出しました。欲を言えば勝ちたかったですけど、勝ち負けではなくて、いい野球ができたと思います」とは高円・山本晋司監督の言葉である。
高円は、毎年のように部員不足に苦しむチームだ。
大会に入ると、大差で敗れる、そんなイメージさえある。この春も、橿原学院に大差で敗れた。
しかし、今大会は何かが違っていた。
ベンチ入りメンバーは16人と、相変わらず少数精鋭なのだが、奈良情報商に対して、果敢に向かっていたのだ。
徹底していたのは、初球から振っていく姿勢だ。
山本監督が解説する。
「自分たちで考えて野球をやっているのですが、空回りすることなく、決めたことをやっていたと思います。今日の試合でいえば、きっちり自分たちのスイングをする。自分たちのベストなスイングをしようと勝負していたと思います」
高円ナインは日ごろから選手たち独自で練習に向き合っている。
キャプテンは延本亮平が務めているが、練習では日替わりキャプテンを設け、チームを引っ張る。
捕手の山本修司いう。
「日替わりキャプテンというか、練習のリーダーなのですけど、2、3年生で回しています。あれをすることで、個々が責任を持ってやらないといけない気持ちにつながっていると思います」
とはいえ、部員が少ないからこその悩みがあるのも、また事実である。
部員がこれ以上減っては困るから厳しくできないのだ。
チーム内で飛び交う声が少なく、それがぬるま湯の環境を生んでいたのだ。
それが、この春、橿原学院に敗退してから、変わり始めたのだ。
主将の延本は、「春までは“ナァナァ”でやっていましたね。本当の意味で気持ちを出せていなかったと思います。部員が減って困るというのも、あったのだと思います。春の大会で大敗して、みんなが鼓舞できるようになりました」と話してくれた。
山本監督が「例年と違って、まとまりがある」と感じるようになったのは、そうしたチーム内の意識改革があったからだ。
試合は、エースの山上健斗が粘り強く投げ、バックもしっかり守った。
先制を許した後の4回裏一死一、三塁の場面では、一塁走者が盗塁してのダブルススチールを敢行されたが、セカンドが途中でカットし、ホームで刺した。
5回裏には、2死二塁からライト前へヒットを打たれたが、らとの疋田竜一がホームに矢のような送球を送り、補殺を記録した。7回裏には一死一、二塁のピンチから見事に併殺を決めた。
もっとも、監督もナインも「勝ちたかった」とあと一歩の壁を感じたことは間違いない。
しかし、これまでは、大敗して負けることが多かったチームが、見違えた試合を見せたことは今後につながる。部員不足はこれからも続くが、山本監督は、手ごたえを口にし、こう締めた。
「今年の新入部員は5人なのですけど、毎年、これくらいの人数。むしろ、気持ちの入った5人を迎え入れられていますので、そんなに心配はしていないんです。今回、体験したことをその世代なりにアレンジして、高円の伝統につなげてほしい」
(文=氏原英明)