鶴丸vs枕崎
サヨナラで笑えるチームに成長
「これまで3回、サヨナラで泣いてきたチームがここで笑わなかったら嘘だぞ!」
9回裏、スコアは1対4の3点差。攻撃に移る前に徳重貴久監督がゲキを飛ばした。
「その言葉でチームがひとつになれた」と加藤歩主将(3年)。
口火を切ったのは一死から代打で出た西原歩(3年)だった。「5、6回あたりからコーチャーで出ていて、配球とか考えてはいたけど、あの場に出たら思い切り振るだけでした」と西原がレフト前へヒットを放つ。
副主将の心意気を3年生・福永史もつなぎ、黒岩海斗(2年)の起死回生の2点タイムリー二塁打につながった。
点差は1。ようやく火のついた勢いが3連続四球の押し出しを呼び、土壇場で試合を振り出しに戻した。
延長に入ると試合はこう着状態に。
11回に勝ち越しを許したが、その裏、再び同点に追いつく。3番手の1年生・濵﨑貴介の粘りの好投に、内野陣も好守で守り立て決勝点を許さない。
延長15回、一死から代打・永山晃平(2年)がセンター前に弾き返し、最後は黒岩がセンター前にサヨナラ打を放って4時間8分の死闘に決着をつけた。
「絶対返してやると強い気持ちでいたけど、ベンチが盛り上がっているのも見えて、楽しんで打席に立てた」と黒岩は心境を話してくれた。
ベンチ入り20人中17人をつぎ込んでの総力戦だった。
「特別な選手はいないけれど、誰が出ても仕事ができるだけの層が厚くなってきた」と徳重監督。
昨秋は喜界に、今春は沖永良部に、ついでに言えば甲鶴戦は甲南に、いずれもサヨナラ負けで涙をのんだチームが、最後の夏にようやくサヨナラで笑えるチームに成長した。
(文=政純一郎)