松阪vs四日市南
不調でも完封勝利!
三重大会は13日から開幕し、4会場で一斉に行われる。[stadium]松阪球場[/stadium]からいきなり地元・松阪が登場する。
松阪のエース竹内 諒は今大会注目の投手で、最速148キロを計測する本格派左腕だ。東海地区では濱田達郎と共に注目される左腕の一人で、個人的にどんな投手なのかを一目で確認したかった。
初戦となるマウンドで、竹内諒を探ってみた。
まずどんなタイプをはっきりするために投球フォーム・球筋で判断する。
彼の投球フォームを見ると三振をバッタバッタ取れる爽快さを感じさせる本格派ではなく、打ち難さで勝負する技巧派左腕という印象を受けた。フォームは岩田(阪神)と似ている。
ワインドアップから始動し、沈み込みは小さく、ステップ幅が狭く、捻りを入れるようなフォームではない。この着地の幅の狭さ、沈み込みの小ささだと体全体を使うことが出来ず、背筋力の強さに頼ったフォームになってしまう。インステップなので、踏み込み足が突っ張ってしまい、体重が乗らず、勢いのないフォームになってしまう。
球速は常時135キロ前後で最速138キロ。左腕ということを差し引いてもプロ注目左腕として物足りない。抜群のコントロールがあるかといえば、そうではない。思わず唸らせるようなピッチングではなかった。
春では140キロ台のストレートをコンスタントに出していた時と比べるとフォームのメカニズムに狂いが生じていたのだろう。
上半身を鋭く振りに行く投手なので、前足に体重が乗らず、軸足の蹴り上げが上手くいかないと、いわゆる手投げの状態になってしまい、ストレートが走ってこない。調子云々ではなく、この課題を解消しないと活きたストレートを投げるのは難しそうだ。
配球は外角中心にピッチングを組み立てて、追い込むとストレートは高めの釣り球で三振に狙いに行く傾向があり、それ以外は外角へ逃げるスライダー、チェンジアップで三振を狙う配球だ。
現状はスライダー、チェンジアップの2球種のみだが、横回転のフォームから考えて、縦軌道の変化球の習得は難しく、ツーシームなど小さく動く球種で打者を惑わすピッチャーになっていきそうだ。
四日市南のエース・田中優佑(3年)も中々の好投手。田中は体全体を使った投球フォームだ。ノーワインドアップから始動し、左足を胸の近くまで引きあげて、一本足で立ち、重心を下げて、下半身主導のステップで、上から振り下ろす。
彼もストレートは130キロ~135キロ前後は計測していそうだ。変化球はカーブ、スライダー、フォークの3球種を投げるが、いずれも曲がりが大きく、3球種とも水準が高い変化球だ。変化球を中心に投球を組み立てる投球で、好投を見せる。
竹内と田中の好投のまま6回を終了して、0対0。ハイレベルな投手戦となっていたが、7回表、二死から岸が四球で出塁。そして7番後藤浩之(2年)がセンターの頭を超える三塁打で1点を先制。さらに8番上東亮介(3年)のライト前タイムリーで1点を追加し、2対0。
さらに8回表、竹内が自ら三塁打を放ち、4番下村総大(2年)のタイムリーで1点を追加し、3対0とした。
竹内は8回以降も危なげない投球で、完封。四日市南の接戦を制し、2回戦へ駒を進めた。
完封出来たとはいえ、スカウトとスタンドの反応を見て、本来の出来ではなかったというのは容易に想像出来た。甲子園を目指す過程で、狂った部分を修正し、再び140キロ台のストレートを取り戻すことが出来るか。
(文=河嶋宗一)