麗澤瑞浪vs大垣西
エースにまさかのアクシデント…
優勝候補の一角・大垣西が初戦で姿を消した。春季県大会では2位と躍進したが、今大会はエース大藏彰人(3年)が故障で投げられず、苦しい戦いを強いられた。
エースにアクシデントが襲ったのは5月上旬だった。練習試合での投球中、カーブを投げた際に右ひじに違和感を覚えた。だが本人責任感が強いのか言い出せず、5月下旬になって状態が悪化し手術の運びとなった。医師から言い渡された投球禁止は2ヶ月。
日程的に2つ勝ち上がれば今大会での登板可能性もあったが、チームは初戦で敗れそれも叶わなかった。「チャンスでの一本(ヒット)がチームに出ず、逆に相手にはそれが出ていた」と冷静に試合を分析しながら、背番号1は唇を噛んだ。
「自分の子どものように接してきた」と福島秀一監督は大藏との3年間を振り返る。
愛知県で育った大藏は、縁あって大垣西に進学し、監督の家のそばで下宿、食事などもともにしてきた。1年夏から公式戦のマウンドを経験させた指揮官の期待に応え、大藏も順調な成長曲線を描いてきた。2年秋には県大会でベスト4に食い込み、21世紀枠の東海地区推薦校にも選ばれた。
それだけに、集大成となる夏の大会で起用できないもどかしさ。
「市立岐阜商の秋田千一郎君(3年)、県立岐阜商の藤田凌司君(2年)がそれぞれ『監督の息子』だが、自分にとっての大藏は、それに似た感覚。自分の子どもが活躍したチームが勝つ、今年はそういう年なのかな」と闘将はどこか寂しげに話した。
将来性豊かな逸材・大藏は、プロ志望届は出さず大学進学を予定している。
角度ある外角低目へのストレートは浮き上がるような球筋で、落差の大きいタテのカーブとともに一生モノの財産だ。まだ線が細い分、力がつけば140キロ前後の球速は伸びる余地十分。短い夏は終わったが、このあとの秋、冬も彼には大事な期間のはず。
まずはじっくりとケガを治し、次のステージに備えてほしい。
大藏の穴を埋めるべく、他の大垣西メンバーも奮闘した。6回までは相手投手に抑えられていたが、7回裏に5番岡島佑樹(3年)がレフトスタンドへ放り込むと、8回裏には1番遠藤章暢(3年)、2番奥田稜祐(3年)が連続でタイムリーヒットを放った。
大藏に代わりマウンドに上った清水喬介(3年)は5回2失点。「3年生を投げさせたい。(投手を)できるのはアイツくらい」(福島監督)と急造投手ながらセンスを発揮した。
それでも勝てないのは夏の厳しさか。リリーフした1・2年生の投手が打ち込まれ、「打たれながらよく凌いだ」(同監督)ものの、悪い流れを止めることはできなかった。打撃陣もエンジンのかかりが遅く、スイングが硬かった。
勝った麗澤瑞浪は、相手投手陣に16安打を浴びせて7点を奪った。
しっかりとミートする打撃力もさることながら、一・三塁の場面になると揺さぶりをかけ、一塁走者がすかさず二進。ソツのない攻撃でジワジワと相手にダメージを与えた。3安打の4番小柴大和(3年)も怖い存在だ。
エース堀部寛太(3年)は立ち上がりから打たせてとる安定した投球を展開。終盤に相手に詰め寄られたが、粘りきった。
(文=尾関雄一朗)