桜井vs高田
グッドルーザーと言われたとしても…
また善戦どまりだった。
県内屈指の伝統校・奈良高田が1回戦に登場。昨夏の準優勝校・奈良桜井に先制しながらも、中盤以降に押し切られ、1対4で敗れた。
「5回に守備面で良いプレーが出て、そこまでは良かったのですけど、一本出るかでないか、ここ一番で守り切れるかで、3点の差が出てしまった」と奈良高田・河井泰晴監督はうなだれた。
なかなか、勝てないなら奈良高田。
2009年夏、1回戦の西和清陵戦で8点リードをひっくり返されてからというもの、夏に限ると、1勝の壁を破れないでいる。
ただ、こう書いてしまうと、奈良高田に力がないのかと思われてしまいそうだが、決してそんなことはない。
昨年は奈良高田商にサヨナラ負け、一昨年も奈良桜井に逆転負けを喫している。いずれも、試合の主導権を握りながらの競り負けだった。
河合監督もそれについては否定しない。
「ここ数年かで、新チームの立ち上げのころはボロボロでも、秋の大会から冬を超えての春。また、そこから夏と段階を踏んで良いチームを作れている実感はある。結果的に勝てていないですが、去年も今年もチームは悪くないはず」
今年チームに関して言えば、3年生の部員は9人と少ないが、エース・廣瀬雅司の成長とともに、チームは好守両面でレベルアップしてきた。
今日の試合も、奈良高田はベストゲームだった。
2回裏、相手守備にミスから犠打で繋ぐと、1番辻内知樹がレフトへタイムリーを放ち、幸先よく1点を先制した。
5回表には無死2塁のピンチを作ったが、相手が犠打を敢行してきたところ、ファースト・辻内が猛チャージをかけ、三塁をアウトにした。鍛えられた守備力は1回戦負けが続いているチームとは到底思えなかった。
ところが、もうひとつ粘り切れない。
そんな好プレーがあった後、さらなる相手の攻撃に耐えることができなかった。一死一塁から盗塁を許すと、8番杉山功樹にセンターの頭を越えられ、同点。
6回表には、それまで攻守を見せていたショートの横山大規が悪送球で走者を許すと、安打・四球で1死満塁。押し出しの死球、犠牲フライを浴び、2点を勝ち越された。
7回表には四球で走者を出して、またも、二盗を決められる。二死から代打・早川遼を一塁ゴロに打ち取ったが、これがファースト・辻内の目の前で跳ね、痛い4点目を失った。
「1勝を目標にやってきたのですが、日頃の練習が足りなかったのだと思う」とエースの廣瀬は敗因を素直に認めたが、 それだけが勝てない理由の大勢ではないだろう。
河合監督は悔しさを押し殺し、言葉を絞り出した。
「ちょっとした壁を乗り越えられるか。良いチームになるような空気はこの2年で変われたと思うので、あと一歩のところだと思う。それを乗り越えられたら、チーム自体に勢いが出てくるのではないか」
グッドルーザー。(負けっぷりのいい人)
今のところ、奈良高田はそう言われても仕方がない。
だが、それは好ゲームを繰り返してきているということの裏返しでもある。
「2年生が今日の試合にはいっぱい出場していたので、あいつらがやってくれると思う」。
廣瀬はそういって、後輩に悲願の夏1勝を託した。
この日、スタメンに名を連ねた5人の下級生が奈良高田の歴史を変える。
(文=氏原英明)