桜宮vs市岡
三本線に懸ける想い
白地に三本線の入った帽子。胸には『ICHIOKA』。
1906年に創部。100年以上の伝統を誇る市岡の先輩達が築き上げてきた夏の大阪大会の勝利は199。夏の甲子園には10回の出場を誇る。
この日、伝統のユニフォームを身にまとった今年の選手たちが、200勝目を懸けて臨んだが、その願いは来年に持ち越しとなってしまった。
市岡の守備。マウンドに背番号1の姿はなかった。
「先週木曜日の打撃練習中に肩にピリッと感じたようです。痛み止めの注射をしてもと考えたが、無理はさせられなかった」と事情を明かした宇賀神充利監督。
エース正木康平(2年)が初戦に登板すること叶わなくなってしまった。
そのマウンドに登ったのは背番号8の信田晃希(3年)。チームは信田のために1回表に1点を先制していた。
守りでも信田を盛り立てる。特に先頭に立ったのがキャッチャーの花立洋佑(3年)。四球で出した走者の盗塁を、見事の刺す肩を見せた。
しかし、2回以降は苦しんだ。
守りのミスで同点とされると、3回には桜宮の3番笹峰竜也(2年)に勝ち越しタイムリーを浴びた。
4回からは左腕の市下昂紀(2年)がマウンドへ。
しかし、最初の打者への四球をきっかけに2点を失うと、6回には1点、7回には3点。点差が8となり、志半ばでコールドゲームが成立してしまった。
「エースの正木におんぶに抱っこでここまできた。それが故障をしてしまって、何とか正木が投げられるようになるまで勝ち進もうと選手には話をしていたのですが…」と唇を噛みしめた指揮官。
それでも苦境の中で、最後まであきらめずによく戦った選手たちを頼もしそうに見つめていた。
6失点を喫し、試合後に泣き崩れていた2年生の市下を抱きかかえた3年生は、「来年があるんや。がんばれ」と声をかけていた。
「自分達の代で200勝を達成しようとやってきたができなかった。(来年の)後輩には達成してほしい」と話したのは、投手陣を盛り立てた花立。
最後に「三本線の帽子と、このユニフォームの歴史は感じています」とも話した。
『三本線に懸ける想い』
市岡の千羽鶴にはこの文字が書かれた短冊があった。
涙にくれた市下、ケガで投げられなかったエース正木はまだ2年生。
この日からは自分達の代となる。1年間、このユニフォームの歴史と伝統を背負って、次の夏に大阪大会200勝を目指す。
一方の勝った桜宮は、2年生右腕の藤岡大士が先発したが、リズムに乗り切れず。1回は無安打で1点を失った。守りでも、この日は細かい部分でミスが出た。
4回途中からはエース左腕・能塚勇輔(3年)がマウンドに上がり、何とかリズムを立て直し打線の奮起に繋げた。
「昨日の練習でピリッとしていなかった。(夏休み前で)授業があったりとか、夏の難しさがあったと思います」と福原和行監督は不安が的中してしまったこの日のゲームを振り返った。
貴重な教訓となるゲームだったのは間違いない。
スターティングメンバー
【市岡】
9伊藤大貴
8平岡健汰
2花立洋佑
3赤埴偉紀 (主将)
7小出聖也
4姫野光貴
1信田晃希
6林裕哉
5下神和也
【桜宮】
8杉本陽哉
4浅海秀介
9笹峰竜也
2山野雅之 (主将)
5竹内剛志
3三宅悠人
7三宅直人
6片上敦基
1藤岡大士
(文=編集部)