門真西vs大阪電通大高
継投のタイミング
投手の継投は、試合を進めていくうえで最も難しいとされているが、大阪電通大高にとってこの日ほど難しいと思ったことはなかったのかもしれない。
大阪電通大高の先発のマウンドに立ったのは、背番号10をつけた小澤誠也。1年生ながら夏の初戦のマウンドを託された左腕は、コーナーをうまく使ったピッチングで凡打の山を築いていく。
緩い変化球を実に有効に使って門真西打線を完全に沈黙させ、気がつけば5回まで無安打のピッチングを見せていた。
だが、大阪電通大高の保坂亮監督にとっては、抑えていくたびに複雑な思いが募った。
「小澤はまだ1年生。いきなり無理をさせるわけにはいかないので、50球から70球を目処に替えるつもりだったのですが、なかなか継投のタイミングが難しかったんです」
抑えている投手を交代させることは相当の勇気がいる。尚且つ味方打線も門真西のエース・岩佐稜平を相手にわずか1安打と、どちらに流れが転がってもおかしくない展開だった。
だが、70球に届こうかという7回。指揮官が「ひとり走者を出したら交代させる」と腹をくくり、先頭の2番吉池寿に四球を出し、左打者の岩佐が犠打を決めたところで小澤をマウンドから降ろした。「本人も相当疲れが見えていたし、この交替は仕方なかったです」。
しかし、この交代をきっかけに門真西の打線に活気がついた。
「正直、小澤君の投球にうちの打線が完全に抑え込まれていて、交代したときは言い方が悪いですけれどホッとしたんです。ここから何とか突破口を開いていこうと思いました」と門真西の西山均監督は好機を見出していた。
その言葉通り、まるで呪縛から解き放たれたように、替わった二番手の田中克直から、3番大井隆麻がしぶとくセカンドとライトの間に落とすテキサスヒットを放つ。
すると5番岩山和哉の打席でまさかの暴投。大阪電通大高からすると、何ともアンラッキーなかたちで先取点を奪われてしまった。
その勢いに乗り、6番池脇大夢もライトへタイムリーを放ち、吉池が生還して追加点を挙げた。この2点は、好投を続けた門真西の岩佐を前にしてみれば、実に大きな2点となった。
大阪電通大高にとって、この継投は流れを相手に引き渡してしまったきっかけとなったのかもしれない。
でも、ひとりの1年生投手にこの展開を託すのは酷だったとも言える。指揮官の思いを考えると決して責められない投手交替ではあるが、そのタイミングに明暗が分かれた一戦だった。
スターティングメンバー
【門真西】
5小林義生 (主将)
4吉池寿
1岩佐稜平
3大井隆麻
8岩山和哉
2池脇大夢
9澤野嵐
7田中直輝
6増田祐希
【大阪電通大高】 (主将)田中克直
8中尾誠一郎
4長谷川直人
5中居龍馬
9窪山涼
3岡部遥嘉
6岡野穂高
2田邉翔
1小澤誠也
7高綱純也
(文=沢井史)