柏日体vs専大松戸
隙のない試合運びで初の決勝進出
柏日体対専大松戸。近年、急速的に力を付けて入る学校同士の対決だ。
専大松戸は、2010年春ベスト8、夏ベスト4、秋ベスト4と県内でも常連クラスのチームに成長を遂げ、昨年は春に関東大会出場。近年の実績により素質のある選手が入学し、チーム力を維持してきた。
柏日体は5年前から京都国際で指揮を執っていた金原健博氏が就任。着実に強化をしていき、昨夏ベスト8、昨秋ベスト4と徐々に県内でも結果を残し始め、今年はまさに勝負の年。今大会の準々決勝では昨夏に甲子園ベスト8の習志野をコールド勝ちし、勢いに乗っている。接戦になることが予想された。
両チームはエースが登板。専大松戸は栗原洸。柏日体は近藤スルヤ秀光。
1回表、専大松戸は一死二、三塁から4番栗原が変化球を泳ぎながらもセカンド後ろへしぶとく落として先制点を挙げる。さらに2回表にも、一死一、三塁から1番内山の内野安打で1点を追加。2対0とした。
同点に追い付きたい柏日体は2回裏、一死二塁から近藤のライト前タイムリーで1点を返し、さらに3回裏にも一死一、三塁から5番廣辻がスクイズ。一塁手の前にしっかりと転がし、同点に追いつく。
5回裏には一死満塁から6番のスクイズで1点を勝ち越し、3対2となった。
専大松戸の栗原は、これがこの夏2試合目の先発のマウンド。
テークバックの時に肘が下がった状態から真上から振り下ろすフォーム。縦振りの軌道によって角度ある直球と切れのある変化球を生み出し、三振の山を築いてきた。
しかしこの日の栗原は腕が振れない状態であった。そのため彼本来の手元まで失速しないストレートに陰りが見えたのだ。
本来のストレートが投げられない歯痒さが栗原の表情から伺えた。
栗原は腕が振れた時、会心のストレートが投げられる時は直ぐに表情に現れる。三振を取った時、大きくガッツポーズを見せる。良くも悪くも、それが栗原のバロメーターと見ていた。
元気良く腕を振る事が出来ていた栗原がこの不安そうな表情。決して相手に見せまいと隠していたのではなく、フル回転出来る状態ではなかったというのが分かった。
栗原は6回途中で降板。二番手に栗原に次ぐ第二の投手として成長を見せた石島を投入する。石島は好投を見せていき、味方の反撃を待つ。
8回表、専大松戸は永濱が四球で出塁。栗原がセーフティバント。投手と一塁側へ転がす絶妙なセーフティバントとなり、内野安打。無死1,3塁のチャンスを作る。5番斉藤がセンターへ犠牲フライを放ち同点に追いつく。
さらに9回裏も、先頭の佐藤がセンター前ヒットで出塁し、4番市川 将太の犠打で一死二塁のチャンスを作る。
だが、後続が凡退し、延長戦に突入した。
11回表、猪俣がレフト前ヒットで出塁。1番内山のレフトフライの後、猪俣が盗塁を仕掛けたが、廣辻の素晴らしいスローイングに阻まれタッチアウト。
廣辻の盗塁阻止は大きかった。
その11回裏、1番武藤がスライダーを泳いで打った打球はふらふらと打ち上がる。センター、セカンドが追い、センター永浜がダイビングキャッチしたが、セカンド山川と交錯するアクシデント。
二人とも担架で運ばれ、スタンド中が二人の状況を心配したが、2人とも元気にグラウンドに戻ってきた。スタンドは2人に万雷の拍手を送った。
2番林はライトフライ。3番佐藤は四球と二死から出塁。4番市川はセンター前ヒット。右中間へ転がり、佐藤は一気に三塁へ。ここで先ほど盗塁を阻止した5番廣辻。2ストライクからだった。スライダーを右に打ち返し、ライトへのサヨナラタイムリー。
延長11回に及ぶ激戦は柏日体が制した。
習志野戦ではチャンスを一気に畳みかけてコールド勝ち。
追い上げられても冷静な守備で得点を阻止。そしてこの準決勝では各打者がしっかりと役割を確認し、スクイズで得点を積み重ね、最後も二死からチャンスを作り、4番市川が長打を狙わずに右打ちで廣辻につないでサヨナラ劇につなげるなど、隙のない試合運びで勝ち上がった。
また習志野戦まで左腕の鈴木を隠すなど金原監督の采配も冴え渡っている。
木更津総合は最速144キロ右腕の黄本創星、破壊力抜群の打線と刺激が強いが、柏日体は木更津総合に比べてミスが少ない。
打線の爆発に頼るのではなく、周到な試合運びを見せて、着実に勝ち上がっている。初めて上位に行くチームを勢いにあるというが、柏日体は勢いの中にも、攻守ともに洗練され、隙のない好チームを作り上げている。
決勝戦ではどのように試合を組み立てていくのか。最後まで息詰まる神経戦になっていきそうだ。
(文=編集部:河嶋宗一)