関西学院vs西宮北
胸を張って!
「お前らはよくやった。今日はノーエラーやったやないか。相手の“E”の所には“2”という数字があったけれど、お前らは“0”やった。ミスはしていない。しっかり自分の力を出し切れたんやから、胸を張れ!」
試合後、球場外で行われた最後のミーティングで、西宮北の辻克樹監督はナインを前にそう語りかけた。
スコアは0対4。結果だけを見れば、単なる完封試合に過ぎないかもしれないが、内容は決して一方的ではなかった。
1回からいきなり満塁のピンチを背負い、関西学院の波にのまれそうにもなった。
それでも、先発のエース・喜久田賢哉(3年)が内野ゴロに仕留めてピンチを脱した。以降、中盤まで1安打に抑える力投。「今まで何度もピンチを背負ってなげてきていたので、今日も今までどおりの気持ちで投げました」とエースは振り返った。
だが、ここまでの3試合を1人で投げてきた喜久田の疲労は決してゼロだったわけではない。
本来はマウンドを分け合うはずだった控え投手の岡田弘明(3年)が6月の練習試合で左足首のじん帯を断裂。緊急事態に陥ったチームの窮地を救うために、1人で奮闘してきた。
しかも相手の関西学院は、今春の県大会出場を争う西阪神支部大会の決勝戦で敗れている。
だからこそ、負けたくない。喜久田の気持ちはただそれだけだった。
だが、第二の立ち上がりとも言われる6回表。関西学院の先頭打者・八木亮介(3年)に甘く入ったストレートをライトに打ち返され、ランニングホームランを許してしまう。
「それでも1本打たれただけなので、何とか気持ちを切り替えようと思ったのですが…」と喜久田。
以降、気持ちのブレが生じたのか、走者を背負う場面が増えていく。
そして7回には3本の長打を浴び、2点を許してしまった。
「自分がもっとピンチで踏ん張れたら…。終盤に腰の調子が思わしくなくて、球が浮いてしまいました。チームのみんなに申し訳ないです」と、エースは涙をこぼした。
それでも、持てる力を振り絞ったエースの力投に応えようと、野手も堅守で盛り立てた。
「地区(支部)大会決勝で関西学院と対戦したときは、ミスで負けてしまったけれど、今日はミスなんてなかった。春の負け以降、練習では特に3年生には色々厳しいことを言ってきたけれど、全員よくやってくれました。この子らを私は誇りに思います」と選手たちを讃えた辻監督。
結果はどうであれ、春の教訓を見事に生かした試合だった。
スターティングメンバー
【関西学院】 (主将)鈴木太陽
5江川遼治
7辻本岳史
8八木亮介
9久保雄太郎
3中田盛太
2外山玲
6上田星
4安達勇太
1木村聡志
【西宮北】
2平田滉一郎
4福岡昴志
1喜久田賢哉
6山岡昌平 (主将)
5宮本大輔
8前山梨緒
9米満宥太
3奥薗信人
7田中純平
(文=沢井史)