近江vs高島
注目右腕と伝統校の対決の行方は…?
4点ビハインドで迎えた9回表、高島のエース・瀧中瞭太(3年)のマウンド。
二死後、迎えた1番橋本大樹(3年)に対し、1ボール2ストライクから威力のあるストレートで見逃し三振で抑え込んだ。
「今日は自分のベストピッチは出来たと思います。初回にいきなり1点を取られはしましたけれど、最小失点で食い止められたし、気持ちは切り替えられました」と、瀧中は気丈に振り返った。
今大会注目の右腕と伝統校の激突。県大会屈指の好カードに加え、日曜日ということもあり、[stadium]県立彦根球場[/stadium]のスタンドは大勢の観客で埋まっていた。慣れない状況の中、独特の緊張感が瀧中の体を硬くしていた。
「緊張で球が浮いているのが分かりました。でも序盤はなかなか修正できなかった」と瀧中は話す。
2回は連続三振を奪って自分のペースを掴んだかに見えたが、3回に二死から走者を二塁に置き、5番大石和樹に2球目の甘く入ったストレートをセンター後方に運ばれ、2点目を失った。
それでも自信のあるストレートと130キロ半ばの高速スライダーを武器に、凡打の山を築いた。緊張がようやく取れてきた5回以降は、近江打線から快音が消えた。
「ストレートを狙われているのは分かっていたけれど、自分の持ち味で勝負したかった」と、エースはマウンドで仁王立ちした。
流れは絶対に渡さない。その意地だけをボールに乗せて投げ続けたストレートは、威力十分だった。
打線は近江の先発・広瀬亮太(3年)から再三チャンスをつかむも、あと1本が出なかった。
「相手はうちのミスにつけ込んで確実に得点したけれど、うちはそれが出来なかった。その差ですね」と高島の二宮良信監督は攻撃を悔やんだ。
ヒットは同じ6本でも、着実に得点を重ねた近江の攻撃力の高さに、ただ脱帽するしかなかった。
周囲から注目を浴びるようになったエースの成長を「心が強くなった。入学した頃は、ここまでの投手になるとは思わなかった」と指揮官はエースの成長に目を細めた。
その成果を今日の試合でどうしても出したかった。それでもエースは最後にこう言い切った。
「自分がここまで来られたのは周囲の方々のお陰。周りの人がいなかったら、自分はここまで成長出来なかったと思います」
2年3ヵ月という高校生活での進歩を、しっかりと最後の夏のマウンドに刻みつけた。
スターティングメンバー
【近江】 (主将)福井真吾
7橋本大樹
8山口健太
9中島孝士郎
6藤原隆蒔
5大石和樹
3鯰江純樹
4塩田純平
2津坂純
1広瀬亮太
【高島】
2大久保智貴
5松井寿将
6寺田悠来 (主将)
7中川高充
8土井貴史
1瀧中瞭太
3大須賀仁
9川原林拓斗
4佐藤純
(文=沢井史)