関西学院vs篠山産
新たな歴史に向かって
試合後、ベンチ前に整列した篠山産ナインに応援席からは割れんばかりの拍手が送られた。
「正直、ここまで来られるとは思っていませんでした。最後は関学さんとの力の差が出ましたが、選手たちはチーム一丸となってよく戦ってくれました」と篠山産の坂口裕亮監督はナインをねぎらった。
先発のマウンドに立ったエースの泉伸也は、打たせて取るピッチングで上々の立ち上がりを見せた。
だが、回を重ねるにつれ、見えない重圧が自らを襲った。
「勝ち進むごとに相手打者は良くなる。丁寧にいこうとしすぎてしまった」と、4回に2失点したマウンドを悔やんだ。先頭の3番八木亮介にレフト前ヒットを打たれ、犠打を挟んで5番久保雄太郎に手痛いタイムリー二塁打を浴びた。
以降、四球、ヒットと相手の勢いを止めることができず、6回でマウンドを降りた。
「タイムリーは、アウトコースを狙っていたのがほとんど甘く入ってしまいました。もっと思い切って投げられたら…」と悔やんだ泉。
試合は一方的になりかけたが、8回の攻撃で7回からマウンドを譲り受けた細川一輝がライトスタンドへ2ランホームランを放った。このままでは終わらせない。そんな気持ちを込めた一矢に、スタンドは湧いた。
「昨秋に県大会で負けてから、1日100スイングを日課にバットを振ってきたんです。その成果を出せました」と細川はしてやったりの表情を見せた。
指揮官も「細川はチームで一番長打力があるので期待はしていたのですが、本当に打つとは」と手放して喜んだ一打。
その後もヒットが飛び出し、チームは押せ押せムードが漂い始めたが、関西学院の小刻みな継投の前に、あと1本が出なかった。
「後半は良かったが、前半に消極的な攻撃があったのは痛かったです」と指揮官が唯一表情を曇らせたのが、初回の先制のチャンス。二死を取られた後に、ヒットと四球で走者を溜めるも、5番の蔭山博律が三振。ここでもし先制点を奪っていれば、流れをつかめたのかも知れない。
だが、チームは30年ぶりの県ベスト16に進出するなど、大いなる功績を残した。4番の岸田康祐を含め、ベンチ入りメンバーには2年生が6人いる。
「自分たちがやるべき場面で、しっかりと自分たちのプレーをすれば結果はついてくる。それを実感できた夏でした」と振り返った坂口監督。
初の県ベスト8という新たな歴史に向かって、篠山産の挑戦が始まる。
スターティングメンバー
【篠山産】
4古川輝弥 (主将)
6熊谷彰太
3澤本晃弥
5岸田康祐
8蔭山博律
7山本和宏
9上見信二
1泉伸也
2岡部はじめ
【関西学院】 (主将)鈴木太陽
5江川遼治
7辻本岳史
8八木亮介
2河合祐輝
9久保雄太郎
6上田星
3中田盛太
4安達勇太
1木村聡志
(文=沢井史)