佼成学園vs都立片倉
意地を見せた
今年は都立校の活躍が目立った。東ならば都立雪谷、都立小山台、都立千歳ヶ丘、西ならば都立日野、都立片倉がベスト8に残った。中でも都立片倉は都立勢として唯一ベスト4に残り、初の準決勝に残った。準々決勝では東亜学園に完勝。勢いに乗っており、投手では最速144キロ右腕・金井貴之、技巧派左腕・小田嶋 治直人と投手力も高い。十分に決勝に行ける力は有している。
一方で佼成学園は2年連続準決勝進出。突出した選手はいないが、攻守ともに洗練され、隙のない試合展開で、勝ち上がってきた。いわゆる勝ち方を知っているチームだ。試合は勢いのある都立片倉が優勢かと思われたが、経験値の高い佼成学園が有利に試合に進めていく。
吉田 大成(3年)の遊ゴロで1点を先制した佼成学園は4回裏、7番猪野 和也(3年) は三塁強襲安打。猪野は盗塁を敢行。あっさりと成功させた。猪野は小田嶋のモーションを完全に盗んだ盗塁であった。
動揺を隠せぬ小田嶋は8番越後 育海(3年)がレフト線の横を抜けるタイムリー二塁打を与えた。ここで投手交代し、金井へスイッチ。磯崎が犠打で送り、一死三塁から9番薄木 将人(3年)が中前安打を放ち、1点を追加。1番磯部 凌太(3年)は2-2から内角ストレートで空振り三振。2番神足 勇樹也(2年)は3ボール1ストライクから内角ストレートを捕えセンターフライ。
東亜学園戦では最速144キロを計測した金井だが、連戦の疲れと猛暑の影響からか、体のキレがなかった。左足を高々と上げて、体を沈みこませて、体の近くで鋭く腕を振って、140キロ台の速球を連発する金井であったが、この試合では腕の振りが鈍ってしまい、135キロ前後。本来の出来ではなかった。140キロ台の速球を投げる金井を想定していた佼成学園にとって調子が落ちていた金井は怖くはなかった。
6回裏、越後は2ボールから高めのストレートを捉えレフト前ヒット。8番磯崎はサード犠打。9番薄木は2ボールから外角ストレートを打ち返し、中前安打、1番磯部のファーストゴロの間に1点を追加。二死二塁。2番神足はセカンドゴロ。セカンドはショートへとすし、ショートの送球が逸れる。その間に1点を追加。3番小林 颯(2年)がストレートを捕える右中間を破る三塁打で7対0に追い上げる。コールドまでの点差になった。先発・磯崎紀大も135キロ前後の直球、スライダー、ツーシームを丁寧に投げ分け、6回まで無安打。投打に率のないゲームを展開出来ていた。
コールドを阻止したい都立片倉は7回表、3番小林 章(3年)はショート内野安打。4番今井 雄太(3年)の時にパスボール。ボールは後ろ深くに転がり、三塁へ。今井には1-2からスライダーで空振り三振。小田嶋はセカンドゴロを放ち、一点を返し、コールドを阻止。7回裏、三番手の小澤が無失点に抑え、8回を迎える。
8回表、都立片倉は一死から峯尾 竜二(3年)はスライダーを捉えてレフト前ヒット。鳥巣 裕太(3年)はストレートを当ててレフト前安打。2番今岡 謙(3年)がプッシュバント。一、二塁の間にころがす絶妙なバントとなり、オールセーフ。一死満塁。3番小林はストレートを捉え、投手強襲安打。センターへ抜けていき、二者生還し、7対3に。
さらに9回表、長谷川 太良(3年)は2-2からストレートを捉え右前安打。一死となって、8番柿崎 健太郎(2年)は追い込まれてからスライダーを捉え、レフト前安打。一死一、二塁となって、9番峯尾がスライダーを捉えて右前適時打で3点差に。しかし後続が倒れ、試合終了。佼成学園が38年ぶりの決勝進出を果たし、都立片倉の快進撃は準決勝でストップした。
負けはしたが、最後で意地を見せコールドを阻止。7回に1点を取って、その裏に0点に抑えたことで、攻撃にリズムが生まれ、打線につながったといえる。それまで登板のなかった小澤巧海(3年)、眞崎雄人(3年)が好投。
代打の切り札・柿崎も安打。途中出場の選手たちが活躍を示した。負けたが、控え選手たちが佼成学園を追い詰めたというのは宮本監督にとっては監督冥利に尽きるものではないだろうか。
初の準決勝進出を果たしたのは金井、小田嶋の投手力だけではなく、チームの勝利に向かって一致団結出来るチームであるから。初の甲子園へ行くには7点取られたようにまだ足りない部分がある。その穴を埋めるために後輩たちが先輩の志を受け継ぎ、さらに強いチームになって帰ってくるつもりだ。
(文=河嶋宗一)