加古川北vs関西学院
足でつかんだ決勝進出
初回の攻撃が全てだった。
1番の渋村涼亮がライトオーバーの二塁打を放つと、2番の山本成哉が一塁方向に転がした犠打が相手の失策を誘い、渋村が生還。あっという間に先制点を挙げた。
ここから関西学院の先発・木村聡志がリズムを乱して4番の後藤修斗には四球、そして7番村上里樹のセカンドのゴロを悪送球して二盗していた山本もすかさずホームを陥れた。
関西学院からすれば、地に足がつかないまま点を奪われた、という雰囲気だった。
このとき関西学院を慌てさせたのは、加古川北の持ち前の機動力だった。
「今まで、機動力をなかなか使える場面がなかったのですが、今日やっと使えたような気がします」と、福村順一監督が話すように、このイニングだけで盗塁は2個。2回に3点を挙げたときもヒットで出塁した1番渋村の盗塁が絡んでいる。
昨年の選抜大会でベスト8に進出した時の唯一のレギュラーだった渋村。当時はセカンドだった。
新チームでも昨秋の大会ではセカンドを守ったが、野球センスの高さを買い、秋のオフシーズンに入る直前に福村監督が捕手へのコンバート(参照:2012年4月29日)を決断した。
加えて、キャプテンという柱も担い、試合では自分に余裕がないまま、打撃面で思うような成績を残せなかった。
準々決勝の長田戦でも、ヒットは内野安打1本のみ。なかなか調子が上がらなかったが、今日の試合では初
回からいきなり相手をかき回した。
「今まで打てていなかったし、どうせ打てないんだから、と開き直って打席に立ったのが良かったと思います」と渋村は振り返った。
昨年のチームは、秋の近畿大会と選抜大会で大躍進し、夏の兵庫大会の決勝にも進んだ。
だが、メンバーが入れ替わった今年のチームはゼロから走り出したチーム。「昨年は思い切っていける子が多かったけれど、今年は性格的には去年ほどではない雰囲気でした。でも、足にはスランプはないので練習では今までどおり走塁練習には時間を割いてきました」と福村監督は話す。
シート打撃やノックでも、走者をつけ、常に実戦形式でボールを追う。その積み重ねが、ここ1番の戦いで見事に結実した。
2年連続の決勝戦。だが、昨年引き分け再試合で敗れた無念さは指揮官の心の中にもずっと残っている。
「連続だから…というのはないです。今年のチームはメンバーも替わったので、このチームで明日も同じ気持ちで臨みたいです」と福村監督。
加古川北らしいスタイルが、決勝でも見事に花開くのか、4年ぶりの代表の座をかけた戦いに注目が集まる。
スターティングメンバー
【関西学院】 (主将)鈴木太陽
5江川遼治
7辻本岳史
8八木亮介
9久保雄太郎
3中田盛太
2河合祐輝
6上田星
4安達勇太
1木村聡志
【加古川北】
2渋村涼亮 (主将)
9山本成哉
6別井亮太
3後藤修斗
7東英輔
8村上里樹
5渡邊和哉
1西嶋健吾
4安東雅史
(文=沢井史)