試合レポート

大阪桐蔭vs近大附

2012.07.29

1人ひとりの力が王者の姿を作る

 序盤から先手を取った大阪桐蔭が終始優位に試合を進め、7回コールドで近大付を下した。
今日のマウンドには2番手の澤田圭佑が立ったが、近大付打線を1安打無四球で完封。投打ががっちり噛み合った大阪桐蔭が、2年連続で決勝に進出した。

大黒柱のエース・藤浪晋太郎が注目されがちだが、大阪桐蔭にはそれぞれに役割が分担された“役者”がいて、その役目を選手それぞれがきちんと果たしている。
そのうちの1人、セカンドを守る大西友也もそうだ。
決して派手さはない。打線では、森友哉田端良基などが柱となっているが、大西の働きは、いわば“繋ぎ役”。試合によっては1番を放つこともあるが、2番打者として後ろの打者に犠打や四球で繋いでいく。二塁手としては守備範囲の広さには定評がある。
今日の試合は14安打10得点。その14安打のうち、半分以上の8安打を3番までの打者が稼いだ。2番を放つ大西も3安打を打ち、すべて得点に絡んでいる。

近大付の先発は、今夏初登板のエース中川雅裕。ヒジのケガの影響で登板を見合わせ続けてきたエースを大一番でぶつけてきた近大付・藤本博国監督。
だが、立ち上がりから制球が定まらず、先頭打者の森に四球を与えた。続く2番の大西は犠打を試みたが、これが相手の失策を誘い、無死、一、二塁というチャンスを作った。ここから犠打、死球と走者がたまり、2試合連続ホームランを放っている5番・安井洸貴がセンター前へ鮮やかなタイムリーを放ち2点を先制する。
2回になると、中川の状態は限界を迎えていた。スライダーを投じたところで、2回の投球でヒジに違和感を覚えた中川をあきらめ、3回からはここまで主戦級にマウンドに立ってきた田中誠也に交替する。

だが、そこから大阪桐蔭打線は火を噴き始める。
1番。森の右中間を破る三塁打を皮切りに大西のライト前タイムリー、そして打率が6割を超える3番・水本弦のレフト前ヒット。さらに4回にも9番・澤田圭佑からの4連打で3点を追加。6回には二死・一塁のチャンスに大西がタイムリー二塁打を放ち、試合を一方的にした。
森、水本と好調な選手に挟まれ、単なる「繋ぎ役」ではなく「火付け役」だった大西。昨秋から二塁のレギュラーではあったが、1年の春に肩を痛め、昨春に手術。昨秋からやっとの思いでレギュラーをつかんだが、打率が1割台と振るわず「自分がもっと結果を残していたら…」と唇をかんでいた。


だが、冬場に徹底的に打撃練習に時間を割き、センバツでは,316という高打率で優勝に貢献。直後の春季大会でも好調を維持していたが、6月中旬の高知での招待試合の明徳義塾戦で初回の打席で顔に死球を受けて大量に出血し、救急車で病院に運ばれた。幸い骨には異常はなかったが、顔はひどく腫れ、医者からの絶対安静の告知でしばらく練習にも参加できなかった。食事もろくに出来ず、体重も落ちた。夏の大会前の大事な時期の突然のアクシデントに心が折れそうになった。数週間がたち、ようやく練習再開の許可が下りたが、打撃練習では打席に立っても恐怖感が拭えなかった。
「インコースの球が来ると、反射的に体が外に向いてしまっていたんです。頭では、早く対応したいと思っていたんですけれど…」(大西)。
それでも怖がってばかりはいられない。ティー打撃練習では、球を上げてもらう後輩に敢えて顔の近くに球を上げてもらい、目線ギリギリの球に慣れるよう努力した。とにかくインコースの球に積極的に向かっていかなくては、夏は打てない。そして自分の立場もない。そう言い聞かせて、夏の大会に臨んだ。

今日の試合でも、インコースの球に全く怯んでいなかったと自負している。
「ここにきて、ようやく自分でも理想のバッティングができるようになってきたと思います。明日も、そういう打撃を見せたいです。明日、勝つために自分の役割を果たしたい」(大西)。
豪快な打撃や剛球だけではない。こういった“役者”がいてこそ、真の強いチームが作られる。
そしてその大阪桐蔭は今日、いよいよ大一番を迎える。

スターティングメンバー
大阪桐蔭
森友哉
大西友也
水本弦 (主将)
田端良基
安井洸貴
白水健太
笠松悠哉
妻鹿聖
澤田圭佑

【近大付属】 (主将)杉本涼太
中家健登
麓大成
細川晃佑
中谷聡一郎
山本和輝
大橋将大
北村雄太
中川雅裕
ダフィー太平

(文=沢井史)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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