東京実vs佼成学園
東京実、逆転のホームイン
再三のチャンス、生かした東京実と生かせなかった佼成学園の差
試合の中では、何度かチャンスが訪れるものだ。それが、自分たちで作ったものなのか、相手のミスで貰ったものなのか。そして、そこで一本出るのか出ないのか、また、出た一本がシングルヒットなのかロングヒットなのか、そうした一つひとつのタイミングや運不運を含めて、それによって試合の流れは大きく左右されるものである。
そんな、野球の試合の流れの機微が如実に表れた試合でもあった。
初回に、佼成学園は1死で左前打で出塁した池田君が、2つの暴投で三塁まで進むと、ここで4番神足君が左前へぽとりと落としてあっさりと先制点が入った。しかし、神足君は二盗を試みてアウトとなりチェンジ。貰ったチャンスで得点できて、さらにチャンスを作ろうとして失敗。これで、佼成学園に傾きかかった試合の流れは一旦止まることになった。
そして、お互い走者を出したり野選があったりして好機を作りながらもあと一本が出ないまま前半を終えた。
5回を終わって、東京実は3安打で2回には満塁としながらもあと一本が出なかった。佼成学園も3回に1死一三塁としながら後続がなく無得点。4、5回は3人ずつで終わり、何となく東京実の鎌田投手を攻めあぐみかかってきた。こうして、試合は膠着してきたという雰囲気になってきた。
こうなると、次の1点が大きくものを言うようになるのだが、それが6回、東京実に訪れた。
この回東京実は、1死後倉部君が追い込まれながらも四球を選ぶと、続く篠崎君の一ゴロはやや跳ねて野手を襲って一三塁となる。太田君も四球で満塁となり、鎌田君が一二塁間を破って同点となった。こうなると、東京実に勢いがつく。植竹君は内野ゴロ本封となったが、9番下山君が左中間を破って満塁の走者を一掃した。
貰ったチャンスにロングヒットが出た東京実が見事に逆転した。
東京実・鎌田君
これで、試合の流れはまったく一転。東京実ペースとなる。
その裏佼成学園も、1死後池田君、北君、神足君という上位の3連打で1点を返すもののそこまで。鎌田君が粘りの投球を見せた。
東京実は、9回にも木内君の安打と四球に2つの失策で2点を追加した。スタンドも、大いに盛り上がり、昨夏の西東京大会準優勝校を下した。
32年目となる大ベテランの東京実・山下秀徳監督は、「これといった選手がいるわけではないですし、そんなに強いチームではないですから、スタンドも一緒になって、全員で戦っていくということはいつも言っていることです。それにのせられて、いいところで長打が出ました。鎌田は、コントロールがいいので、試合は作れる投手ですから、競っていければ何とかなるとは思っていました」と、60人を超える部員全員の結集の勝利を強調した。
昨夏の西東京大会で、あと一人というところで甲子園を逃した佼成学園。
それでも、チームとしては決勝まで行ったことは一つの自信にはなっているはずである。
ただ、藤田直毅監督は、「あれで、勘違いしてしまっているところもありましたね」と、厳しい。そして、「結局こんな感じで、打てないんですよ。打てなさすぎで全然何も出来ませんでした。打順の読みも今日は、すべて外れていました。これで、自分たちは強くないんだということが分かったと思います」と、夏へ向けて新たな出直しを誓っていた。
期待の左腕渡邊君も終盤に登板したが、失策絡みで2失点。簡単に先頭打者に安打を許すのも、入りが不用意な感じがした。これも、夏への課題の一つであろう。
(文=手束仁)