試合レポート

関根学園vs加茂

2014.07.21

雨の中の激闘!最終回に劇的なドラマが!!

 この日の新潟は雨のため、4球場中、3球場が雨天中止。唯一行われた[stadium]柏崎市佐藤池野球場[/stadium]での試合も、グラウンド整備のため、試合開始が2時間遅延。豪雨が降ったかと思えば、5分後に晴れ間が広がるなど、二転三転する天気同様、第一試合は1点を争う好ゲームとなった。

 前の試合、3年ぶりの夏1勝を上げた加茂。その立役者となったエース・吉田陽祐(3年)は、この日もテンポの良い投球で、初回をわずか9球、三者凡退に抑える。

 するとその裏、加茂の打線が爆発。
関根学園先発・樋口(3年)の立ち上がりをとらえ、先頭の高山(2年)が四球で出塁。2番・相馬(3年)のバントの際、樋口がスリッピーなグラウンドに足を取られ、内野安打に。続く、3番・吉田がセンター前に運び、あっさりと先取点を上げると、4番・栗山(2年)もライトオーバーのスリーベースでさらに2点を追加。6番・五十嵐郁(3年)の犠飛で4点目を上げ、さらに7番・川口(2年)、8番・山井(3年)の連続長短打で、この回一挙に5点。試合の主導権を握る。

 吉田は、二回、四回に関根学園6番・市橋にタイムリーを浴び、1点ずつ失うが後続を打ち取る粘り強いピッチング。そんな吉田の粘投に奮起した打線は六回、1点を追加し、6対2とリードを広げる。

 六、七、八回と強力関根学園打線を三者凡退に抑えてきた吉田は、そのまま最終回のマウンドへ。
誰もが加茂の勝利を確信した最終回、劇的なドラマが待っていた。

 この回先頭の3番・小山(3年)、4番・土田(3年)が連打で出塁。一死後、この日2安打2打点の6番・市橋の打球はショート正面。遊ゴロ併殺だと思った瞬間、遊撃手がまさかの悪送球。7番・鴨居(3年)の打席で吉田が悪送球し、2点差となるが、鴨居がライトフライに倒れ、二死二塁。

 だが、関根学園の選手は、諦めていなかった。
途中出場の斉藤航(3年)が投手内野安打で出塁すると、代打・磯貝(3年)がセンター前へタイムリーを放ち、1点差。1番・滝沢(2年)を歩かせ、二死満塁。ここで2番・平野(3年)がレフト前へ起死回生の逆転タイムリーを放ち、7対6と試合をひっくり返す。

 その裏、ここまで3投手の継投でつないできた関根学園は、中島(3年)を送り出す。だが、緊張感からか、ストライクが入らず、3四球で二死満塁のピンチを迎えてしまう。
加茂2番・相馬は1ボールからの2球目に手を出し、一塁へのファールフライに倒れ、試合終了。激闘を制した関根学園がベスト16へと駒を進めた。


エキサイティングプレイヤー 吉田陽祐(加茂・3年・投手)

 ほぼ手中に収めていた2勝目、ベスト16がするりと抜けるのだから、高校野球は恐ろしい。

 シード校の糸魚川白嶺を破り、勢いに乗る関根学園打線に対し、吉田は初回から攻めの投球を見せた。
ぬかるむマウンドの上で、1球投げ終えるたびに後ろポケットへ手を隠し、雨で手が濡れないように、ベストピッチのために最善を尽くした。投手不利な状況下で、真っ向から向かっていき、特に六回から八回まで三者凡退を続けた投球は見事。九回、味方のエラーにもかばうような仕草を見せ、二死までこぎつけたが、最後の最後で逆転タイムリーを浴びてしまう。だが、続く3番・小山を力で抑えこみ、センターフライ。最小点差にとどめ、味方の反撃を信じるエースの意地が垣間見られた。

 試合後、球場廊下で見かけた吉田はどこか清々しい表情を見せていた。激戦を物語る泥にまみれた背番号1のユニフォームは、この日試合を行った4校のどの選手よりも燦然と輝いていた。

(文=町井敬史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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