東海大四vs駒大苫小牧
風速10メートルを超える強風の打撃戦!
風速は10メートルを超えた
7回裏、東海大四が11対7とリードを広げる。なおも一死満塁で3番山本浩平(2年)が右中間へ長打を放った。三人の走者が全てホームに還ってくる。14対7になりコールドゲームが成立した。
しかし、打たれた駒大苫小牧の伊藤大海(2年)はマウンドに向かおうとする。「7点差がついてコールドになったのがすぐにはわからなかった」。
そして打った山本も三塁まで到達し、次のプレーに備えようとしたのだ。「三塁に滑って、もう1点と思った。コールドになるなんて考えていなかった」。
両チームの選手も審判団にコールド成立を告げられ、少し遅れて挨拶の列に並ぶ。追いつ、追われつの展開だっただけに、コールドゲームになるとは誰も思っていなかったという証拠だろう。
試合は打撃戦。そこにホームからセンター方向への風速10メートルを超える風がファクターとして加わった。とにかく打球が上がれば野手の目測を遥かに上回る。内野へのイージーフライに見えても、野手は捕球できない。第1試合(北海vs札幌日大)でもそうだったが、選手は口々にこんな風の中での公式戦は「経験したことがない」と発した。
2回に駒大苫小牧が奪った5点は、打撃の力に風がマッチしてのもの。何度もフライを追いかけた東海大四のセンター・渡瀬太揮(2年)は、「風吹いていて、ちょっとのフライでもオーバーになる。ポジショニングを確認して守ること大事だと思った」とこの試合特有の守り方があることを感じていた。
1対5とリードされた東海大四だが、試合はまだ序盤。すぐに駒大苫小牧投手陣を攻略した。2回裏に2点を返すと、3回には相手守備のミスにも乗じて4点を挙げ、逆転に成功。
駒大苫小牧の佐々木孝介監督は、先発の桑田大輔(1年)から背番号1の岡崎遼太朗(2年)、そして本来のエースである伊藤へと継投するが、東海大四打線が次々に襲いかかる。4回には6番小川孝平(2年)が本塁打を放って、二桁得点に乗せた。
後半は立ち直った大澤志意也(東海大四)
ホームからセンター方向への10メートルの風は、投手にとってはツライ。駒大苫小牧の三投手、東海大四のエース・大澤志意也(2年)はいずれも、投げる球が風でスピードを殺された。
ただ、毎回のように動く打撃戦でも、展開が落ちつく瞬間がある。5回裏、東海大四がこの試合で初めて三者凡退に終わり、ヒットアップしていたグラウンドが落ち着きを取り戻した。
10対7の3点差。次にどちらが試合を動かすのか、次の1点をどちらが取るのかがポイントになる。グラウンド整備後に最初にマウンドに上がる東海大四の大澤は、その重要性を感じていた。そして前半を振り返り、「下半身にタメを作って、体重移動を意識しよう」とピッチングを修正することを試みた。
5回まで115球を投げさせられていた大澤だが、後半は試みた修正が見事に決まる。6回をわずか8球で、この試合初めての三者凡退に切って取った。続く7回のマウンドも三者凡退に打ち取る。「コースが決まって、自分のリズムで投げることができた」と話した大澤。大脇英徳監督も、「相手が嫌がるピッチングできていたと思います」とエースを讃えた。
その裏、味方打線は次の1点を取るどころか、コールドゲームの点差にまで広げて試合を7回で終わらせる。8回のマウンドに備えていた大澤も、勝った喜び以上にまずはコールドゲームに驚いた。
「取って取られての展開だったので、いかに最少失点に抑えるかを意識していた」とロッカールームで話したエースに、窓を開けて「ナイスピッチング」と声をかけた一団がいた。国体に出場する3年生たちだ。途中、大澤が足を痛めたことを気にかけ、「大丈夫か?」とも気遣った。
3年生にとっては、昨秋同じ準決勝で悔しすぎるサヨナラ負けを喫した相手に、後輩達がコールド勝ちしてリベンジした。スタンド最前列で大きな声で校歌を歌った姿が本当に嬉しそうだった。決勝(12日)は朝に国体の開催地である長崎へ向かって出発するため、試合は見られない。後輩達は、「優勝して、良い報告がしたい」と声を揃えていた。
一方、敗れた駒大苫小牧の佐々木孝介監督は、「こうなった時に流れを断ち切ることができる選手がいない。ここが弱点。新チームになってから、強い時は強いが、流れが悪くなった時に断ち切れない。それを指導できない監督の責任だと今、痛感しています」と肩を落とした。
両チームの選手たちの表情を見てもわかるように、コールドゲームになるほどの力の差はないのは明確だ。主将の安田大将(2年)は、「この負けを絶対に忘れない」と今度は自分達がリベンジする番だという気持ちを話し、来夏に目を向けた。