試合レポート

東海大相模vs花咲徳栄

2015.08.18

東海大相模の二枚看板は強みになるのか、それとも迷いになるのか?

東海大相模vs花咲徳栄 | 高校野球ドットコム

杉崎成輝のサヨナラ安打で勝利した東海大相模だが…

 東海大相模はスカウトが注目するような左右の本格派を擁している。それが強みになるのか、投手起用の迷いになるのか、そんなことを考えさせられる試合だった。

 先発の右腕・吉田凌は伝家の宝刀、縦変化のスライダーで1、2回、花咲徳栄打線から3三振を奪っていた。しかし、スライダーをさらに効果的に見せるはずのストレートにキレがない。スピードは最速143キロを計測しているので初戦の聖光学院戦より速いが、それがまったく速く見えない。

 ストレートを速く見せられる投手は例外なくステップする足がグーッと前に伸びて、それに導かれて上半身が前に出てくる。しかし今の吉田はステップと同時に腕を振っているように見える。腕を振っている時間が短いほどボールはいきなりピュッと出てくるように見える。つまり速く見える。しかし今の吉田は下半身が使えていない分、腕を振る時間が長くなり、ボールが速く見えない。打者からすれば球筋が見やすい。当然、球持ちは短くなり、上半身主導のフォームはクセも出やすい。

 2回は得点こそされなかったが岡崎大輔里見治紀にストレートをヒットにされ、3回には太田幸成、岡崎、大瀧愛斗にスライダーを3連打され2失点、4回には笹谷拓海上村康太にもスライダーを打たれ(自らの暴投で1失点)、久々宇竜也には135キロのストレートを打たれて降板した。投げる球がないというノックアウトぶりである。

 決勝までのことを考えれば準決勝の関東一戦は吉田を先発させたいが、勝ちを優先すれば小笠原 慎之介の連投がベストな選択である。しかし、肩のケアという今日的な問題もあり、小笠原に連投はさせたくない。「吉田というドラフト候補がいるじゃないか」という“外野の声”もある。つまり、門馬敬治監督の“投手起用の覚悟”に水をさす要素が非常に多い。左右の二枚看板を擁していることが東海大相模にとっての難題だなと思った次第である。

 


 花咲徳栄戦に戻ると、リリーフした小笠原 慎之介はよくなかった。縦変化のスライダーとカーブ、さらに120キロ台後半のチェンジアップなど変化球のキレが素晴らしく、ストレートの最速は149キロ。1つ1つの球を見ればため息が出るほど素晴らしいが、それらがアンサンブルを奏でない。その最大の理由はストレートが高めに浮いていること。被安打は5回3分の1を投げて2だが、打たれたのはいずれもストレート。変化球勝負の伏線で投げたストレートを打たれている、そんなふうに見えた。

 この2安打された8回表の攻防が最大のヤマ場だった。3対2とリードした花咲徳栄は3番岡崎大輔が2球目のストレートを内野安打、4番大瀧愛斗が4球目のストレートをライト前にヒットして、ノーアウト一、二塁という絶好のチャンスを迎える。
 5番里見治紀がバントして二、三塁、6番楠本晃希が2球目145キロのストレートを捉え、2者を迎え入れたと思ったが、これがレフトの正面で走者は動けないまま。そして東海大相模ベンチは7番笹谷拓海を敬遠して満塁策を選択。次の高橋昂也花咲徳栄の切り札と言ってもいい投手なので代打は出せない。この敬遠策がこの試合の勝負を分けた(満塁で打席に立った高橋は2球目を投手ゴロ)。

 東海大相模は8回に高橋のボークで三進した走者を外野フライで還すという効率のよさで同点に追いつき、9回はエラーで出塁した千野啓二郎を3番杉崎成輝のレフト越えの二塁打で還し、サヨナラ勝ちをした。

 準決勝の相手・関東一は、劣勢を跳ね返すオコエ瑠偉の2ランホームランで勝ち上がったチーム。勢いのついた同士の戦いの勝敗を分けるポイントは、投手起用にありそうだ。

(文=小関順二

東海大相模vs花咲徳栄 | 高校野球ドットコム
関連記事
・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.15

ノーシード・二松学舎大附が2戦連続で延長戦を制す【2024夏の甲子園】

2024.07.15

プロ注目153キロ右腕が3回戦で姿消す 好リリーフ見せるもあと1点及ばず【2024夏の甲子園・兵庫】

2024.07.15

”超攻撃野球の浦学”から”堅守の浦学”へ。難敵相手に1対0の完封勝利発進

2024.07.15

栃木では6試合が雨天順延、宇都宮北と足利大附が初戦を突破【2024夏の甲子園】

2024.07.16

専大松戸が一挙6失点許してヒヤリ プロ注目の大型遊撃手の逆転本塁打で4回戦進出【2024夏の甲子園】

2024.07.14

甲子園通算19度出場・享栄が初戦敗退 1点差でまさかの敗戦【2024夏の甲子園】

2024.07.13

四国の夏を盛り上げる逸材20名! 全国注目の四国BIG3から「東大野球部か医者か」の秀才、名門・池田の小さな大エースまで【逸材選手リスト】

2024.07.15

ノーシード・二松学舎大附が2戦連続で延長戦を制す【2024夏の甲子園】

2024.07.13

モイセエフ擁する豊川、初の夏の甲子園へ戦力向上中! カギは超高校級スラッガーの前、投手陣は急成長 センバツの雪辱をはたすか!?【注目チーム紹介】

2024.07.15

プロ注目153キロ右腕が3回戦で姿消す 好リリーフ見せるもあと1点及ばず【2024夏の甲子園・兵庫】

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.23

大阪桐蔭が名門・日体大に1勝1分け! スター選手たちが快投・豪快弾・猛打賞! スーパー1年生もスタメン出場 【交流試合】

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」