Column

狭山ヶ丘高等学校(埼玉)【前編】

2015.11.29

 近年、埼玉のシード校の常連となっている狭山ヶ丘高校。今秋も埼玉県大会で四強入りし、いよいよ全国の舞台も視野に入ってきた。そんな狭山ヶ丘の取り組みや今後の意気込みについて伺った。

2年生のほとんどがクラスメート その担任は山田監督

山田 将之監督(狭山ヶ丘高等学校)

 今年のチームの特徴は2年生の部員23名のうち19名が学校でも同じ教室で学ぶクラスメートで、非常に仲が良い事。また、チームを率いて5年になる山田 将之監督はそのクラスの担任だという。
「今年の2年生の代だけテストケースとして同じクラスになったんですが、そのおかげで選手同士でも言えるところは言えるし、かといってぶつかる事もないし、わだかまりなく話せているようです」

 キャプテンの濱川 裕吾(2年)も「他のチームに比べて、やりやすいんじゃないかと思います。教室でも野球のことばかり話していますし、監督はスポーツ選手のメンタルの部分について教えてくれるので勉強になります」と話す。

 また高校では珍しいが、狭山ヶ丘では山田監督の「グラウンドで言われた事を学校にまで引きずらないようにさせたい」という意向から、キャプテンの他に選手会長という役割を設けており、現在は川村 駿介(2年)が務めている。
「キャプテンは野球面を、選手会長は学校生活や挨拶、部室をきれいに使っているかなどの生活面を見ています。自分は、選手会長になって『みんなの手本になろう』と決めたので、かなり自覚を持ってできるようになりましたし、チームメートのみんなも勝つにつれて、何も言わなくてもできるようになってきたと思います」

 このような体制のもとでスタートした新チームで、山田監督が最初に着手したのは選手に試合経験を積ませる事だった。夏の大会からレギュラーで残ったのが濱川と増島 緩人(2年)の2人だけ。8月は例年よりも練習試合を多く組み、山形遠征では酒田南東海大山形山形電波工山本学園、東日大昌平といった強豪校と戦い、9連戦を行った。その前後には強豪校と対戦し、
帝京には2勝、エースを使ってくださった健大高崎にも勝って、さらに東海大相模にも勝つ事ができました。そういった経験の中で、選手たちが『自分たちも、できるんじゃないか』と自信を培う事ができたのがすごく大きかったですね」

 また、ミーティングを重ねてチーム内でよく話し合いの場を持った。濱川主将も「試合後はミーティングを開くんですが、最初は発言できる人とできない人がはっきりと分かれていて、こちらから指名する時もあったんですけれど、みんなどんどん積極的になっていって、それぞれの意見を交わす事ができるようになりました」と振り返る。

 同時にこの頃は、上宮から東海大、そしてTDK千曲川でプレーしてきた山田監督の野球に対する考え方を選手に浸透させていった時期でもあった。
「夏までは3年生を中心に指導していたので、マンツーマンで2年生に教えてあげられるような時間がありませんでした。そこで、新チームが発足してからは『2ストライクに追い込まれたら、ストレートと変化球の両方のタイミングを作らなきゃならないから、足を上げたり大きく構えたりすると三振する確率が高いよね』とか、『難しい球が来たら、別にファウルで逃げてもいいんだよ』など、初歩的なところから伝えていきました」

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[page_break:先制攻撃で埼玉県大会を勝ち上がる]

先制攻撃で埼玉県大会を勝ち上がる

 こうして経験と知識とチームワークを高めた狭山ヶ丘は秋の埼玉県大会でベスト4に進出。この好成績を収められた要因は、試合序盤からの先制攻撃が功を奏したからだ。
「立ち上がりの3イニングに勝負を懸けていました。序盤に主導権を握られると、どうしても相手に合わせた戦いになってしまうので、『ゲームの入り方を意識しよう』と毎試合、声を掛けていました」

 秋季大会ではできるだけ先行を取り、先制して、そのまま逃げ切り。追い付かれても、逆転は許さずに勝ち越すという展開で勝ち上がっていった。この戦略を成り立たせる上で大きな役割を果たしたのが、1番打者の川村選手。33打数15安打で打率.455、出塁率は.500だった。

永田 琢己選手(狭山ヶ丘高等学校)

「打撃フォームをノーステップに変えて、変化球も打てるようになったのが好調の理由だと思います。1番は、新チームになるまで経験した事がない打順だったので最初は戸惑いがあったんですけれど、先頭打者で出塁するとやっぱり嬉しいですね。それで、自分は1打席目を大事にしていて、球数を投げさせる為に見ていくバッターもいますけれど、ファーストストライクから振っていってチームに勢いを付けたいと思っています」

 4番を任された永田 琢己(2年)も打率.480をマークし先制打を数多く放った。
「自分は中学時代、浦和シニアのBチームにいて、まったく試合に出られませんでした。当時は、練習も全然やっていなかったのですが、狭山ヶ丘に来てからはメンバーに入りたくて、今年の夏の大会前もアピールをしていたんですけれど、結局、選ばれませんでした……。

 それで、新チームが始まってからでは遅いと思って、夏の大会期間中から自主練習の時間を使ってスイングやティーバッティングでバットを振りまくりました。そうやって危機感を持って練習していたらミート力が上がったので、それが結果に繋がったのだと思います」

 しかし、浦和学院との準決勝は1対4、春日部共栄との3位決定戦は1対3で敗れた。この2試合に先発した藤野 優斗(2年)は「狭山ヶ丘に入ったのは『浦和学院に勝ちたい』と中学時代からずっと思ってきたから。対戦が決まった時は『やっとこの時が来た』と思ったんですけれど、まだ力不足でした。浦和学院の打線は追い込んでも、しっかりと自分のスイングができていたのがすごかったですね。ただ、勝てない相手ではないし、そこまで差はないとも感じました」と、確かな手応えを口にした。

 前編では新チームスタート直後から秋の大会まで振り返っていただきました。後編では秋が終わってどんな課題をもって取り組んでいるかを伺いました!お楽しみに!

(取材・文=大平 明


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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