市立尼崎vs明石商
明石商との接戦を制した市立尼崎が33年ぶり、二度目の甲子園出場!
2008年西兵庫大会の加古川北対洲本以来、8年ぶりの公立校対決となった今年の兵庫大会。
真夏の晴天の下、決勝の舞台となった[stadium]明石トーカロ球場(明石公園第一野球場)[/stadium]には、平日にもかかわらず多くの観衆が訪れた。
両チームのエース、明石商・吉高壯(3年)、市立尼崎・平林弘人(3年)の先発で13時に始まったゲーム。先制点を奪ったのは先攻の市立尼崎だ。
3回、先頭の9番・殿谷小次郎(2年)が中前打で出塁。犠打、パスボールで1死三塁の好機を作ると、市立尼崎ベンチは2番・中村佳喜(2年)の打席でスクイズを敢行。投球はワンバウンドし、空振りとなるが、捕手が止めきれず、バックネットへ。スタートを切っていた三塁走者の殿谷がホームベースを踏み、1点を先制する。
しかしその裏、明石商は9番・津岡就人(3年)の四球、2番・大西進太郎主将(3年)の中前打で作ったチャンスに3番・吉高がレフトへ犠飛。たちまち1対1の同点に追いつく。
明石商は続く4回裏にも1死から6番・栃谷慎太郎(3年)がレフトの頭上を破る二塁打を放つと、7番・藤原祐介(3年)が中前へタイムリー。勝ち越し点を奪う。
市立尼崎は7回に反撃。1死後、谷尻尚紀(2年)のこの日、2本目となる中前打と9番・殿谷の死球で2死1,2塁のチャンスを作ると1番・飯田泰成(2年)が三遊間を破る。このヒットの際に三塁手の栃谷と本塁を狙った2塁走者の谷尻が走路で交錯。走塁妨害のジャッジが下され、谷尻は労せずしてホームへ。試合を振り出しに戻す。
8回にも市立尼崎は吉高の後を受け、マウンドに上がった明石商・三浦功也(3年)の立ち上がりを攻める。左前へのクリーンヒットで出塁した3番・三浦良裕(2年)を犠打で二塁へ送ると、5番・平林がライト後方への二塁打。二塁走者の代走・堤敏夫(3年)のスタートが遅れたため、本塁生還は難しそうに思われたが、ライトからホームを結ぶライン上にカットマンが一人もいないというミスが明石商ディフェンス陣に発生。ライト・山﨑伊織の本塁返球がダイヤモンド内で勢いを失いながらコロコロと転がる中、堤が生還し、市尼崎が逆転に成功する。
この1点のリードを平林が守り抜く。8回は1死二塁、9回には2死、一、二塁のピンチを迎えたが、本塁を踏ませぬ気迫の投球を展開。最後の打者、栃谷の放った飛球がレフトの三浦のグラブに収まると、マウンドには市立尼崎ナインの歓喜の輪が生まれた。
実に33年ぶりとなる甲子園行きの切符。
悲願成就に竹本修監督は人目をはばからず号泣した。
エース・平林は引き分け再試合となった5回戦の西宮今津戦で計14イニングを投げながら、準々決勝以降の3試合においても完投勝利を記録。たまる疲労と戦いながら、短い投球間隔でテンポよく投げ続け、プレッシャーのかかる場面を幾度も乗り越えた姿は強く印象に残った。決勝戦の6回にはライナーをみぞおちに受けるアクシデントにも見舞われたが、気力でマウンドに立ち続け、139球を投げ切った。優勝劇の最大の立役者と断じても異論は出ないだろう。
明石商が決勝までの失策がわずか3ながら、決勝戦だけで2失策を記録。視界にとらえていた夏の甲子園初出場、そして春夏連続出場の偉業を果たすことはできなかった。
甲子園に辿りつけなかった161チームの思いとともに、兵庫代表として聖地に乗り込む市立尼崎。
2016年夏のさらなる躍進を期待したい。
(文=服部 健太郎)
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